7月6日(金) 楊德昌(エドワード・ヤン)監督死去

あの有名な映画監督、エドワード・ヤン監督が6月29日に亡くなったそうだ。結腸がんからくる合併症が原因だそうで、ここ数年は闘病生活だったらしい。そして、そんなエドワード・ヤン監督には申し訳ないのだが、実は僕、エドワード・ヤン監督の作品で、途中やめしてから見終わっていない作品がありまして…(笑)。試験期間の息抜きみたいな感じで見ることにした。

作品の邦題は「ヤンヤン 夏の想い出」。



ヤンヤン 夏の想い出
【原題】:A one and a two/一一
【制作年度】:2000年
【上映時間】:173分
【制作国】:(タイワン)
【監督】:エドワード・ヤン
【出演】:ジョナサン・チャン 、ケリー・リー 、イッセー尾形 、ウー・ニエンジェン 、エイレン・チン

【評価】:★★★☆☆(5点満点中3点)

ヤンヤンは祖母や両親、姉のティンティンと台北に住んでいる、ごく普通の家庭の少年。ところが、叔父の結婚式を境に、様々な事件が起こり始める。祖母は脳卒中で昏睡状態となり、母は精神不安定となり新興宗教に走り、父は初恋の人と再会して心を揺らす。姉は隣家の少女のボーイフレンドと交際を始めてしまう。そして、ヤンヤンにも幼い恋心が芽生え始める……。「クーリンチェ少年殺人事件」のE・ヤン監督が現代の家族が抱える様々な問題を瑞々しくリアルに描いた作品。


えっと、まずこの映画の一番の欠点は「日本語タイトル」だと思う。この作品は決して少年「ヤンヤン」を主人公に進むストーリーではなく、敢えて主人公を設定するならヤンヤンのお父さんである「NJ」なはず。それなのに、この邦題ではまるでヤンヤンが田舎のおばあちゃんちに夏休みを利用して遊びに行くみたいやん…というのが正直な感想。

中国語の原題は「一一」。漢字の「一(いち)」は単独で書けば「一(いち)」だけど、二つ書けばそれは則ち「二(に)」になる。だから英語も「A one and a two」って訳してる。せっかく同じ漢数字を使う日本なのに、本当にセンスがないっていうか(笑)。まあ、日本語タイトルの失敗はエドワード・ヤン監督にあるんじゃなくて、日本語版スタッフにあるんだけどね。


まず映画全体の感想を述べると、ストーリーの把握が少々難しく思えた。色んな話が同時進行するから、それぞれを自分の中でリンクさせないと関連性がつかめない。それでも、登場人物の心境が映像からしんみりと伝わってきたのはエドワード・ヤン監督の技術と言うべきなのかなぁ。

台北の街並みが優しく感じられ、そんな中に暮らす台湾の人々の生活がリアルに表現されている。途中、日本に来るシーンがあるんだけど、台湾の人から見た日本はこんな感じなのか~と新鮮に感じられた。途中、どこかで見たような場所が出てきたから「台湾も日本に似ているんだな」と思ってたら熱海でした(笑)。日本人ゲームプログラマー役として出演するイッセー・尾形もいい味を出している。


さて、映画ストーリーと関係ない感想を述べていきたいと思う。

映画を見ていて思ったのは、中国語(北京語)と台湾語の使用。台湾で純粋な台湾語を話す人は少ないよ、ということを聞いていたけど、映画を見る限り結構台湾語使ってるやん、と思った。特にヤンヤンの父親役であるNJとか、会社の人と話をするときはほとんど台湾語だったように思える。それなのに、家に帰って子供達と話をするのは北京語。家の外で北京語を話して、家の中で台湾語を話すならまだしも、何故なのか不思議に思えた。ちなみに、映画の中に登場する若い学生たちは北京語オンリーで台湾語は一切使っていなかった。

僕が勉強している中国語は基本的に大陸式だから、発音も大陸式。だから台湾の人たちが話す北京語は聞き取りにくい。それでも舌足らずで何となく可愛らしく感じられるのは僕だけ?(笑)台湾の人はさっきまで北京語を話していたかと思うと、いきなり台湾語になったりする。この切り替えってどうなっているんだろう。この話は台湾に限らないけどね。


ただ、日本語字幕に「?」となることがたま~にあった。例えば映画の冒頭で「幹你屁事呀」と発言するシーン。字幕では「放っておいて!」となっていたけど、僕なら「関係ないでしょ!」と訳す。他にも学生同士の会話で「わびしすぎるわ」というセリフ。学生が「わびしい」なんて使うのかなぁ…うんん、「かなしー」とか「くらいー」くらいでも良いんじゃない?なんて(笑)。


あと、もう1つ。殺人をしてしまった少年を報道するシーンがあるんだけど、未成年なのにモザイクどころか顔まで大公開。手錠もはっきり見えちゃっているし、台湾てこんな感じなんでしょうか(笑)。「兇嫌(殺人容疑者)」という立派な字幕があって、「龐少年」と名前まで!!ふむ、日本では犯罪者でも未成年は顔どころか名前も公開しないもんね…。


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