中国政府が今年9月3日に「抗日戦争勝利80年」を祝い、北京の天安門広場で大規模な軍事パレードを実施すると発表しました。

中国 “抗日戦争勝利80年を記念” 9月に北京で軍事パレードへ | NHK
【NHK】ことしを「抗日戦争勝利80年」と位置づける中国政府は、9月に首都・北京で軍事パレードを行うと発表しました。習近平指導部と…

ことしを「抗日戦争勝利80年」と位置づける中国政府は、9月に首都・北京で軍事パレードを行うと発表しました。習近平指導部としては「戦勝国」としての立場と増強した軍事力を内外に誇示するねらいがありそうです。

NHK NEWSWEB 2025年6月24日

日本だと「終戦」と呼ばれる歴史も中国にとっては「勝利」なんですよね。毎年この時期になると日本のテレビや新聞では「戦後○○年」という特集が組まれますが、中国では華々しく「抗日戦争(=日本の帝国主義侵略に抵抗した戦争)勝利○○年」と題する宣伝が行われます。

以前、とある中国の人から「なぜ日本は素直に『敗戦』と言わないのか」と聞かれたことがあります。確かに日本で8月15日は「終戦記念日」と言い「敗戦記念日」とは言いません。中国にとって終戦という表現はあまりに客観的で日本が素直に負けを認めていないように映るのかもしれません。

戦後80年が経つ今も中国は自らが「戦勝国」という意識が強いです。例えば「国際連合」、かつて日本が国連安全保障理事会の常任理事国入りするという話が出ると、中国は猛反発しました。中国語で国際連合は「連合国」(“联合国”)と言います。第二次世界大戦の際、日本・ドイツ・イタリアなど枢軸国と戦って勝利した「連合国」と同じです。実際、英語ではどちらも”United Nations”ですから、連合国と国際連合は実質同じものです。なので中国からすれば「なぜ連合国に敗れた日本が連合国(=国際連合)の常任理事国に入るのか」というのが中国側の主張です。

敗戦や連合国という言葉には敗戦国としての屈辱がついて回ります。敗戦と言わずに「終戦」と言い、連合国と言わずに「国際連合」と言う。これはこれで日本として知恵を絞った上での表現だったのでしょう。逆に言うと、こうしたフラットな表現が日本人を敗戦国としての劣等感から解放してくれたと言えるかもしれません。

よく中国は日本に対し「歴史を鏡とすべき」(“借鉴历史”)と言います。けれど抗日戦争勝利を大々的に記念して軍事パレードを実施し、愛国心を鼓舞しているようでは――どちらが煽っているのかと思わざるを得ません。ここに中国の複雑な歴史観を見て取れます。中国にとって「抗日戦争勝利」は勝利の歴史である一方、日本にしてやられた歴史でもあるからです。

今年は戦後80年の節目を迎えます。日本では8月15日が終戦記念日です。この日は「勝ったこと」を記念する勝利記念日でなければ、「負けたこと」に焦点を当てる「敗戦記念日」でもありません。あの悲惨な戦争を繰り返さないために反省し、平和を誓う日にしたいものです。