北京は朝陽公園の南にある“凤凰中心”(フェニックスセンター)で開催中の《触深深海――远古生命演化特展》を見てきました。日本語にするなら「深海に触れる――太古の生命進化特別展」といった感じでしょうか。魚や無脊椎動物の標本を中心に深海生物の形態や生態を紹介した展示会です。

英語では“TOUCH THE DEEP OCEAN”という企画名のようです。

中国では子どもたちが夏休みに入っているので、ビックリするような人出だったらどうしようと思ったのですが、大分すいていました。午後4時と少し遅めに行ったからかもしれません。

ホルマリン漬けになって展示されている標本や、触れられるようにプラスチックで再現された実物大の模型など、さまざまな形で深海生物が展示されていました。館内は暗めで、必要最低限の照明だけ使って「深海」の雰囲気が演出されています。

こちらはギンザメ(“黑线银鲛”)、英語では「シルバーキメラ」と言うそうです。

キメラというのはギリシャ神話に登場する伝説の怪物で、ライオンの頭、ヤギの胴体、ヘビの尾を持ち、火を吐いて人間を襲ったとされています。この魚の姿を見ると「シルバーキメラ」と名付けられたのも分かるような気がします。シーラカンスと同様に古代の魚の原始的な姿を留めた魚ですが、その一方、日本では深海釣りで捕獲されて食用になることもあるんだとか。

こちらはタカアシガニ、中国語では“甘氏巨螯蟹”。うーむ、おいしそう。

このダンゴムシみたいなのはダイオウグソクムシ。中国語でも“大王具足虫”、漢字そのままなんですね。クジラや大型魚類が死んで深海底に沈んできた死骸を食べるんだそうで「深海の掃除屋」と呼ばれているんだとか。

こちらはリュウグウノツカイ、特徴的な見た目なのですぐ分かりました。中国語では“皇带鱼”と言うようですが、「竜宮の使い」という日本語の命名も神秘的ですよね。ちなみに日本の人魚伝説はこのリュウグウノツカイに基づくと考えられているそうです。

前半は標本や模型を使った生き物の解説が多かったですが、今回の展示会は人と深の関わりをテーマにしているとあって、後半は生き物がどう進化してきたか紹介していました。

会場にはボランティアなのか学生と思わしき解説役のスタッフがいて、各所で展示の説明をしていました。子どもたち、みんな真剣に聞き入っています。

後から分かったのですが、展示会は自然科学の分野では中国で最高権威と位置づけられる「中国科学院」が手がけているのでした。こういうのって中国では“なんちゃって”が多いですが、こちらの展示会は本格的で中国科学院の研究成果が存分に展示されて見応えがありました。中国の小学生たちにも「自由研究」ってあるのかな。こういうイベントがあると宿題にも役立ちそうですね。

追記)

職場の同僚に「中国の小学生にも自由研究ってあるの」と質問したら「聞いたことがない」とのこと。一方、私たちが会場で見た子どもたちは“夏令营”(サマーキャンプ)のイベントに参加していたんじゃないかと教えてくれました。逆に私はあんまりサマーキャンプというものに詳しくないですが、夏休みの間に泊まりがけで参加し、学校生活では体験できないようなことがプログラムとして用意されているんだそうです。