高校時代の友人からツイッターで「中国人は漢字が思い出せないとき(急いでメモを取るときなど)どうしてるの?」と質問をもらった。

実はこういう質問は以前にも受けたことがある。日本人が疑問に思う背景には、おそらく日本語の場合「ひらがな」に逃げることができるからじゃないかな。漢字が思い出せなければ、とりあえずひらがなでメモはできる。ひらがなのない中国語はどうするのか、と。

ちなみに中国語にも「ピンイン」(“拼音”)というものがある。日本語でいうローマ字のように、アルファベットで中国語の発音を表記する方法だ。中国の人がパソコンやスマートフォンで中国語を入力する際は、この「ピンイン」を使う。例えば「中華人民共和国」(“中华人民共和国”)ならピンイン表記は[Zhōnghuá rénmín gònghéguó]になる。アルファベットの上にちょこちょこ付いているのは、発音の高低(声調)を表す記号だ。

だったら漢字が思い出せないときは「ピンイン」を書くの?と思うかもしれないが、それはないようだ。職場の中国人スタッフに聞いてみると「さすがに漢字の羅列にアルファベットは混ぜません」と言う。確かにいくらメモ書きでもアンバランス。さらに「文章の中に『ピンイン』が混じっているのは小学生みたいで恥ずかしいですよ」とも言う。中国語を学び始めたばかりの学習者ならありえるかもしれないが、ネイティブの中国人はそういうことはしないのだろう。

ちなみに台湾では漢字の発音表記に「ピンイン」ではなく「注音符号」という記号を用いる。例えば先ほどの「中華人民共和国」(“中華人民共和國”)なら「ㄓㄨㄥ ㄏㄨㄚˊ ㄖㄣˊ ㄇㄧㄣˊ ㄍㄨㄥˋ ㄏㄜˊ ㄍㄨㄛˊ」と記述する。不思議な記号に見えるかもしれないが台湾では一般的に使われるもので、ひらがなやカタカナと同様、漢字が変化してできた文字だ。台湾の人たちが書いた中国語を見ると、この「注音符号」を混ぜて書いた文章もたまーに見かける。見た目が漢字に近いので、そういう意味では「ピンイン」より漢字との親和性が高いのかもしれない。

で結局、漢字が思い出せないときはどうするのか。

中国人スタッフ曰く「同じ発音の漢字で代替します」とのこと。例えば「キーボード」のことを意味する“键盘”。このうち“”という漢字をド忘れした場合、“见盘”と書く……といった具合だ。“”も“”も発音は[jiàn]で同じだからだ。けど……文章に「ピンイン」が混じっているのは恥ずかしいという割に、これも相当恥ずかしいのではと思うけど(笑)。するとスタッフは「緊急用ですね。人に見せるのはやはり恥ずかしいです」と話す。

その上でスタッフはこうとも教えてくれた。

「今は漢字が思い出せないときは、みんなスマートフォンで変換して調べますよ」。わはは、そうか、確かによく考えれば日本も同じかもしれない(^^;)。