北京の冬はとにかく乾燥します。その昔、北京の人たちは冬になると毎晩寝る前に水を家の床にまいていたのだそうです。床はビショビショに濡れますが、それでも翌日の朝になると乾いていたとか。こうやって加湿していたんですね。この話は中国語教育者の相原茂先生のエッセイで読んだと記憶していますが、とにかく北京はそれほど乾燥しているのです。
去年は加湿器無しで乗り切りました。いや、本当は加湿器、欲しかったんです。ただ十数年前の北京留学時代に加湿器で「とある経験」をして、買うことに二の足を踏んでいました。
十数年前の北京留学時に購入した加湿器(2010年11月撮影)
この加湿器、私が当時留学していた頃に購入したものです。見るからに安そうですが(笑)実際その通りで、確か70元くらいだったと記憶しています。当時は1元が約12円でしたから、日本円にしたら840円ほどですね。容器に“菊花”とメーカー名が書いてありますが、もはや今の中国では見たことも聞いたこともありません。
使い始めて数日経った頃でしょうか。部屋中の物に白い粉のようなものが付着するようになったのです。一番分かりやすかったのは電化製品で、部屋のテレビやパソコンにうっすら白い粉がたまっているのが見て分かります。えー、何で?何で?何が原因?としばらく頭を抱えましたが、私なりに出した結論は加湿器でした。中国の水道水は「硬水」で、カルシウム成分を含んでいます。なので中国の水道水を使って加湿するならフィルター付きの「少し良い」加湿器を使わないといけなかったんです。なのに私は安物の加湿器を使って何の濾過もせずに空気中に水道水を飛ばしたもんだから、家中の物にカルシウム成分を含んだ粉だけが残った……と私は見ています。
けど良い加湿器って結構なお値段がするんですよね……安くても2、3万円くらいするものが多い。当時学生だった私に加湿器に散財するほどの余裕はなく、結局諦めました。その後、この加湿器も使わなくなりました。日本の水道水なら全く問題なかったでしょうけど。
で、話は今年に戻ります。北京もここ最近、乾燥してきました。風呂上がりに部屋で過ごしていると体がカサカサしてかゆくなり、ふと加湿器のことを思い出すことが増えました。別にそれだけなら我慢して過ごすんですけど、私たちには真冬真っ只中に娘が生まれるのです。赤ちゃんの肌ってデリケートと聞きますし、そもそも(手元の育児本によると)生まれたばかりの赤ちゃんは「人生で一番乾燥しやすい肌の状態」なんだそう。チケッている場合じゃないなと思い直し、北京赴任2年目にして「少し良い」加湿器を買うことにしました。
購入したのがこちら……パナソニックの加湿器です。日本では売っていない、中国市場に向けたモデルです。
ネット通販には中国メーカーから海外メーカーまでいろんな加湿器がありました。なかでもフィリップスの加湿器が安く高性能だったのでポチリかけたのですが……結局は信頼の日本メーカーにこだわってパナソニックにしました。機能はフィリップスと同程度なんですけど、私の気持ちの問題です。お値段はそれなりにしましたが「安心を買った」と思うことにしました。
大容量タンク(5リットル)なので長時間使ってもそう簡単に水は切れません。加湿力も1時間に最大650ミリリットルの水を放出してくれる強力ぶり。フィルターもしっかりしたものが付属しているんですけど、想像以上に真っ白になるようで2週間に1回は掃除をしないといけないそうです。結構頻繁ですが背に腹はかえられませんね。加湿は風邪の予防効果もあると言いますから、今年の冬は快適な加湿器ライフを過ごしたいと思います。