The time is gone, the song is over, thought I'd something more to say.

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方言を話す気概

中国は広大な面積を有しているため、各地に方言が存在し、その差がとても大きいことで知られています。例えば中国語の代表選手「ニーハオ」(“你好”)。これは北京語を基礎とする標準語の発音であり、各地に行くと「ニーハオ」は「ニーハオ」でなくなります。

  • 上海語「ノンホー」
  • 広東語「ネイホウ」
  • 台湾語「リーホウ」

カタカナで書いただけなので全くそのとおりの発音ではありませんが「ニーハオ」と音が全く違うことが分かると思います。その差は方言というより別言語と言った方が良いかもしれません。だって北京と上海の距離は1200キロほどありますが、これはヨーロッパに例えると、ドイツとイタリアの距離と同じです。だったらドイツ語とイタリア語の違いくらいあっても不思議ではありません。

私は中国語の標準語(北京語)しか知りません。そのため各地の人が標準語を話してくれれば問題ありませんが、方言を話し出した途端に何を言っているか分からなくなります。だから上海の人が上海語で話しかけてきたら、全く分からないと思います。

今回、四川省に旅行に行ってきたわけですが、四川省にも方言(西南官話)があります。中国の内陸部に位置するので、さぞ標準語と違うのかと思いきや……四川の方言については何となーく分かる気がするんですよね。いや、方言を話しているんですが、ところどころ聞き取れる(ような)気がするんです。なんかこう、気の抜けた標準語というか……(笑)中国語の分かる方に説明するなら、四声がめちゃくちゃな中国語といった感じでしょうか(失礼だっちゅーの)。

四川省の人たちもそう(=私たちが聞き取っていると)感じているのか、容赦なく四川方言で話しかけてくる人が多かったような気がします。例えば成都を案内してくれたタクシードライバーのおっちゃんはずいぶん訛っていましたが、半分くらいは分かる気がするのです。まあ、逆に言うと半分は何を言っているか分からないんですけど(笑)。標準語を聞き取るのに比べると苦労します。けれど訛りを隠すことなく話しかけられると、何だか同じ輪の中に入れた感じがするんですよね。

人によっては標準語と方言をうまーく切り替える人がいます。さっきまでチャキチャキの方言を話していたのに、話しかけた途端にきれいな標準語を話し出すんですよね。当然、私としては標準語を話してくれた方が楽ですが、こういう場面に出くわすたびにうまく言えないのですが、なんとなく「よそよそしいもの」を感じるんです。いや、もちろん方言を話されたところで私には理解できないのです。けれど、おそらく地元の人同士が方言で会話している中に入っていけないことに、疎外感みたいなものを抱いてしまっているのかもしれません。勝手なものです。

私が留学していた十数年前は、もっと方言を話す人がいたように感じます。最近は地方に行っても方言を話せない人が増えたのか、そういう「疎外感」は少なくなりました。おそらく標準語を話す人が増えたからかなあ。けど、それはそれで寂しいんですよね。言葉はひとつの文化ですし、聞き取れないなりに相手が何を言っているのか一生懸命聞き取ろうと苦労したのは良い思い出です。

みんなが標準語を話してくれるようになれば旅には困らないと思います。けど、こうした文化は残ってほしいですよね。それこそ、私たち旅行者がその土地に入っていっているわけだから、少しくらい方言をかじって地元の人に話しかけるくらいの気概があって良いと思います。

追記)

ちなみに、なぜ四川省の方言が標準語に近いのかという考察ですが、一説には「屠蜀」を挙げる研究があるそうです。「屠蜀」とは、現代風に言えば「四川大虐殺」とも訳せますが、明の時代に残酷な殺戮を好んだ張献忠なる人物が無差別殺戮を行い、四川の人口を著しく減少させたとされる出来事です。これによって(今の四川方言と違う言葉を話していたであろう)古代四川人が壊滅し、よその地域から移民が増えたからというのが理由だそう。とても興味深いです。

常青树

ふと、中国人の同僚から“常青树”(「常青樹」)は日本語で何と言うのですか、と聞かれました。そのまま訳せば「常緑樹」です。一年中葉っぱを茂らせている樹木のことですね。

けれど、その意味ではないと言うのです。例えば、とある芸能人が一過性ではなく何年も何年も人気であり続けるような場合、その人を指すとのこと。例として挙げてくれたのがSMAPのキムタクこと木村拓哉さんでした。なるほど、確かにキムタクは若い頃のデビューに始まり、今でもドラマに出演するなど根強い人気です。それを言ったら中居くんだってバラエティー番組で今も活躍しています。すると同僚は「中居くんも、そういう意味では“常青树”です」と言います。

なるほど、何年経っても活躍している芸能人のことを、葉の落ちない常緑樹に見立てて“常青树”と言うわけですね。芸能人だけでなく政治家など幅広い分野で使えるそうです。

日本語ではうーん、「息が長い」でしょうか。そう言われると、長く活躍する人を取り立てて表現する日本語はないかもしれません。一方、短命な芸能人のことは「一発屋」。日本語と中国語でそれぞれ正反対の立場を指す言葉ならあるというのは興味深いですね。

狗奴と猫奴

今日、仕事でおじゃました家にワンちゃんがいました。

とても人懐っこくて、おとなしいのです。しっぽを振りながら私の足元に駆け寄ってくるので、たまらず「うにょ~!」と奇声を上げてしまいました。一緒にいた中国人スタッフに「好かれていますね」と言われ、いやあ「犬好き冥利」に尽きます。

ふと、中国語で「飼い主」って何て言うのだろうと悩んでしまいました。

主人”という言葉が思いつきましたが、一緒に行た中国人スタッフによると「う~ん、正しいけど、何か固い」とのこと。“狗认识主人”(犬は飼い主が分かる)のように「主人」であることを強調する場合に使うそうです。じゃあ何て言うの?と聞くと“养狗的”(犬を飼っている人)とか“养猫的”(猫を飼っている人)と直接的に言うとのこと。

うーん、でもそれじゃあまりに“口语”(口語的)です。例えば公園に「飼い主はペットの糞の後始末をしましょう」という看板を作る場合、中国語で“养狗的”(犬を飼っている人)と書いたのでは不相応です。再度聞いてみると、そういう場合は“养狗人士”(犬を飼っている方)になるそうです。

日本語の「飼い主」は日常会話でも、行政の公文書でも使える汎用性の高い言葉です。しかし中国語はそれぞれ使い分けないといけないわけですね。

と、ここまで聞くと、スタッフが“狗奴”や“猫奴”という言い方もありますよ、と笑って教えてくれました。これは直訳すると「犬の奴隷」「猫の奴隷」という意味ですが、それほどペットに尽くしている人のことを指すようです。

タクシーの運転手さん

今日は土曜日だけど出勤。急いでいたのでスマートフォンの配車アプリ*1を使って車を呼んだ。

この配車アプリは一般の人が自家用車を使って有料で客を運ぶというもので、中国ではずいぶん普及している。今やタクシー運転手でさえもこのアプリに登録しているほどで、流しでタクシーに乗る機会はほとんど無くなってしまった。

今日、配車された車は一般の人が運転する自家用車ではなくタクシーだった。職場へ向かっていると、運転手さんが突然「花がきれいに咲いているねえ」と言って街路樹を指さした。紫、ピンクの花が見事に咲いていて「去年はここまで立派じゃなかったよ」と教えてくれた。私も「コロナ禍も明けて、お花も喜んでいるんですかね」と返すと、嬉しそうに「そうだ、そうだ」と笑っていた。

すると、続けて「君、里はどこだい」と聞いて来た。中国人同士が会話すると、よく「どこの人ですか」という話題になる。んで、大体その出身地に関連する話題が続くんだけど、私の場合「日本です」と答えることになる。今日の運転手さんも、私が「北京出身です」とか「南の○○省ですか」などと返してくると思ったのだろう。私は中国で暮らすに当たってなるべく中国人に溶け込むよう(笑)過ごしているので、ちょっとばつが悪そうに「ええと、私、日本人なんです」と答えた。するとバックミラー越しに私を一瞥して「え、あんた日本人なんかい!?」と驚いた反応をした。

すると、それからがマシンガントーク。いつ中国に来たのか、仕事なのか留学なのか、中国語はいつから学んでいるのか、結婚しているのかなどと質問攻め。聞きたいことを一通り聞いた後は2008年の北京オリンピックのときには日本人客をよく運んだなどと昔話を始められる(^^;)。

以前はタクシーに乗るとこうして運転手さんと会話していたなあと懐かしい気持ちになった。配車アプリは事前に乗車場所と降車場所を指定するので、運転手さんに行き先を告げる必要がない。だからひと言も会話がないまま車を降りることがほとんどなのだ。そして運転手さん、チャキチャキの北京っ子。中国語の北京訛りが強くて一部が聞き取れない。運転手が楽しそうにいろいろ話すのに、何を言っているのか分からないというシチュエーションも以前はよくあったなあ。

今の中国はスマートフォンの普及でいろいろ便利になったけど、こういう「人とのやり取り」が減ってしまった。別に昔の方が良かったと賛美するわけじゃないけど、人との距離は近かったような気がする。あと中国語の聞き取り訓練にもなったしね(^^)。

References
*1中国ではスマートフォンで車を呼ぶ配車サービスが広く使われている。とても安く、私の場合、自宅から職場までタクシーで行っても20元(約380円)ちょっと。この距離を日本でタクシーに乗ったらおそらく1000円はくだらないんじゃないかな。

损人害己

中国外務省の報道官による定例記者会見。日本政府が先端半導体の製造装置をめぐって中国などへの輸出の際の手続きを厳しくすると発表したことを非難した。そのときの中国語が……

全球芯片产业链供应链的形成和发展,是市场规律和企业选择共同作用的结果。将经贸和科技问题政治化、工具化、武器化,人为破坏全球产供链稳定,只会损人害己。

世界の半導体産業とサプライチェーンの形成と発展は市場の法則と企業による選択が共に作用した結果だ。経済や貿易、それに科学技術の問題を政治化したり、道具や武器のように利用したりしてサプライチェーンの安定を人為的に破壊する行為はただ「損人害己」するだけだ。

ここに登場する“损人害己”(損人害己)。人を損ない己を害す。つまり「他人を傷つけるだけでなく自らも傷つける」という意味だ。中国語はこれをたった4文字で表すけど、日本語にするとずいぶん長くなっちゃう。通訳をしている人は追いつかないだろうなあ。

ちなみに中国外務省が公表した公式の英語訳は”benefit no one and will eventually backfire”(誰も得をしないし、最終的にはしっぺ返しを食らう)。”backfire”というのは「しっぺ返しを食らう」「裏目に出る」という意味らしい。なるほど、日本語もかっこいい表現に訳せないものかなあ*1

References
*1「人を憎むは身を憎む」「人を呪わば穴二つ」といったことわざがまさに「人を陥れようとすると自分もまた同じ目に遭う」という意味らしいけど、外交当局の会見で使うにはちょっとねえ(^^;)。
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