10月18日(日) 初仕事…中国語で通訳

【 その1 】 【 その2 】

ついにやって来たこの日。

中学一年生から独学で中国語をし始めて、ここまでやって来たぼぼよる。
中国映画界を代表するスターの通訳をやらせていただく話になって(結構いきなり決まった)、ドタバタして、迎えた今日。

恥を残さん仕事にしたい。「名副其实」…評判と実力が一致している、という意味の四字熟語。ぼぼよる、頑張るで!!!!!


集合場所になったんは、スターらが泊まっとる赤坂プリンスホテル。

なんとまー!!どうしてこうも僕は赤坂と縁があるのか!!(思い込み、やかましい!!)
中学生時代を過ごした懐かしい赤坂の街を抜けて、赤坂プリンスホテルにやって来る。入るのは初めて。

到着すると、通訳スタッフ専用の控え室に移動。
12名の通訳たち。みんな帰国子女か、ハーフ。独学で学んだ純粋な日本人は僕一人。誇りを持ってプライドを持って!!

その日のスケジュールを確認。僕の担当する陳坤(チェン・クン)はインタビューが3つも!!
人民日報海外版、ASIAN WAVE、ポラリス…。人民日報は中国のメディアじゃけん、通訳はいらんけど、他は必要そう。

確認が終わってから、のんびりタイム。他の通訳スタッフに去年の話を聞いたりする。
みんな同い年とかなのに経験が違いすぎる。刺激受けまくりんこ。


それぞれ担当するスターの部屋に挨拶をしに行くことになった。一日中行動を共にする通訳として当然のこと。
僕は同じフロアだからという理由で、房祖名(ジャッキー・チェンの息子)の通訳をする台湾人のカレンさんと一緒に行くことに。そこでいざ行ってみると、まだ房祖名は寝とったらしく、ものすご不機嫌な顔で、それも浴衣姿で出てきた。

房祖名じゃけんまだ何にも無かったけど、陳坤だったらぶち切れとったかもしれん!!!!!
ということで、作戦変更して電話をしてから行くことにした。

ルルルルル…

相手「もしもし?」

出たのは何故か女性。中国人女性に特有の甲高い発音。多分マネージャーだと踏む

自分「もしもし、陳坤さんのお部屋でしょうか?」
相手「そうですけど。」
自分「本日専属の通訳を務めさせていただきます、中村源太と申します。ご挨拶を兼ねてお部屋に伺わせていただこうと思いまして…、お時間の方はよろしいでしょうか?」
相手「は?意味が分からないんですけど?」

…え?いや、ちゃんと説明しとるがな!!緊張で、震え上がってしまった…。

自分「で・す・か・ら、本日専属の通訳を務めさせていただく者です。自己紹介をさせていただこうと思いましたので。」
相手「今ね、都合が悪いの。どうせ12時50分にロビーで会うんでしょ?その時でいいじゃない。今でなきゃいけない必要があるの?」
自分「そうですね…失礼いたしました…。」

早口の中国語でさんざんまくし立てられた挙げ句、けんもほろろに断られてしまった。
聞くところによると、陳坤の通訳はみんなしたがらんらしい。陳坤がイヤなのではなくて、陳坤の周りにいるマネージャーやスタイリストとかが如何にも「大陸の中国人」というか、仏頂面でくっついていて、通訳をしにくいと言ったらありゃしないとか。

とりあえず、集合時間までおとなしくしとることにした。


12時50分の集合時間になる。それでも、スターだから?か、中国人だから?か、来ん。
しばらく待ちょうたら…来た来た!!ど派手な格好したスターの方々。あまりに派手なドレスに思わず吹き出す。


するとマイクロバスとは別に、一台のバンが。これは何?
…と思ったら、これは陳坤の専用車らしい。陳坤は人気があるけん、ファンに囲まれんようにするためだとか。

遅れながら陳坤も到着し、マネージャーに挨拶。マネージャーはただのおばさん。あっそう、とあっけない態度の初対面。
車に乗り込んで、さっそく新宿ピカデリーへ向かう。

車内で会場スタッフ(中国人)の方が僕を陳坤に紹介してくれた。

「陳坤さん、こちらは本日通訳を担当して下さる中村さんです。ネイティブの日本人ですから陳坤の話された中国語を完璧な日本語に通訳してくださいますが、どうぞ中国語を話されるときにはゆっくり話していただけたらと思います。」

陳坤も僕を見て「よろしく」と挨拶してくれた。車内では僕は陳坤の真後ろの席。
ああ、僕がここで陳坤の首を絞めたら翌日の新聞のトップニュースになるんじゃなあ…と、しょうもないことを考えたり。


しかし会場の新宿ピカデリーに到着したら、大変なことになっとった。
もう、ファンが大量におって無茶苦茶な状態。

スタッフから指示があるまで降ろしちゃいけんと聞いとったので、車で待機。いざ合図が来て、降りるとファンが押しかけ、ほんまわやくそに。
一応通訳兼「アテンド」じゃけん、隣に寄り添って、ファンが来んように必死に「開けてください!」「押さないでください!」と叫ぶ。


そして、新宿ピカデリー最上階の、通常の人は入れんVIPルームに通す。
忙しそうに歩きょうるスタッフを横目にスターの方々は優雅そう。


左が范冰冰(ファン・ビンビン)で、今回は作品『麦田』を代表して参加。
真ん中が房祖名(ファン・ズーミン)で、ジャッキー・チェンの息子。
右が僕の通訳を担当する陳坤(チェン・クン)。

中国映画界の大物が勢揃い。ものすごい光景…。


こっちは黄覚(フアン・ジュエ)。かっこいいーーーー!!!!


インタビューに答えようる范冰冰。んんー、美しい。目の正月。


こちらは房祖名。お父さんのジャッキー・チェンに、やっぱり似とる。
えなりくんみたいな雰囲気がどこかしら流れとる。


こちらは、昨日見た映画の主演を務めた居文沛(ジュ・ウェンペイ)。
そして今マイク持っとるのが、袁文霆(ユアン・ウェンティン)。お二方ともむっちゃきれいーーーー!!!!

ただ気になるんが、さっきの三人とこの二人はソファも違うし、全然話もしない。
というのも、こちらに座っとる居文沛は元々女優じゃなしに、音大の教授をしとる人。今回映画に出ただけで、それと比べると向こうの三人は俳優としてずっとやっとるプロたち。もちろん居文沛もすごい演技するけど、なんか芸能界の派閥?を感じさせる一幕だった。

そんな居文沛を見とったら、昨日の映画がものすご良かっただけに切ない気分になって、話しかけてみた。


美女に囲まれて、ウハウハ。

居文沛に何か気の利かせたことを言おうと思い、「你可能不认识我,但我认识你。(あなたは私を知らないかもしれませんが、私はあなたを知っています。)」と言ってみた。これは胡錦涛国家主席が福原愛に言ったセリフ。

居文沛に言うたら笑ってとった。映画の感想や自分の中国語学習歴など、少しお喋りをした。居文沛の映画『即日啓程』は個人的にはお気に入りじゃけど、中国ではいまいち大作の陰に隠れてしまって、そこまで流行らなかったらしい。ものすごおもしろいのに、もったいない。

そろそろ舞台挨拶の時間。

僕は一応陳坤の隣にずっとおったんじゃけど、不意にマネージャーから質問をされる。

「陳坤は直接舞台袖に行けばいいの?」

申し訳ないんじゃけど、僕は通訳だから細かいことまでは知らない。
どうなんでしょうねぇ…と困りょうたら、またまたマネージャーに切れられてしまった。

「あなたは所詮通訳だものね。ちゃんと分かってるスタッフ呼んできてよ!」

そりゃあ…僕は所詮通訳ですけど…。

なんだか、それを言っちゃあおしまいよ、という気がしないでもない。
スタッフを呼んできて、細かい説明をしてもらった。僕にはその言葉を置き換えることしかできんのんか…。

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