北京の郊外、密雲という場所で小学生が巻き込まれる交通事故が起きました。
中国北京市密雲区の小学校近くの交差点で26日、小型車が通行人をはね、けが人が病院に運ばれた。地元警察当局が発表した。インターネット上には現場とされる動画が拡散。子どもとみられる数人が倒れているのが写っていた。
確かにインターネット上には個人が撮影した事故発生直後とみられる映像が出回っていて、私も見ました。どうやら被害に遭ったのは女子児童のようで、道路に横たわって動きません。こういう子どもが被害に遭うニュースに接する度に本当に胸ふたぐ思いです。特に子どもが生まれてからより思いが強くなりました。親御さんたちの気持ちはいかばかりかとお察しします。
中国では事件・事故が起きた場合、警察が“通报”(通報)という広報文を出すことがあります。今回の交通事故についても夕方になって地元警察から発表がありました。
2025年6月26日13时许,在密云区育才路与东门大街交叉口附近发生一起交通事故。经初步调查,韩某某(男,35岁)驾驶小客车行至事发路段时,因操作不当与行人发生碰撞,伤者被及时送医治疗。事故正在进一步调查处理中。
2025年6月26日13時ごろ、密雲区育才路と東門大街の交差点付近で交通事故が発生しました。初期調査によると、韓某某(男性、35歳)が小型乗用車を運転し現場付近を走行中、操作を誤って歩行者と衝突しました。負傷者は直ちに病院へ搬送され治療を受けています。詳しい事故の原因は捜査中です。
本当かどうか知る由もありませんが、地元の警察によると事故の原因は“操作不当”(操作を誤って)ということです。ただ冒頭に紹介した共同通信の記事を読むと少し印象が変わってきます。
中国では社会への不満を持つ人による無差別殺傷が多発。学校周辺で車が暴走して子どもが巻き込まれる事件が次々と起きている。
警察当局は小型車に乗っていたのは35歳の男で「運転操作を誤ったのが原因」と発表したが、交流サイト(SNS)には「本当に運転ミスなのか?」などと疑問を呈する投稿が相次いだ。
現場はマンションが並ぶ住宅街。近くにいた高齢男性は「小学1年生が被害に遭ったと聞いた。児童の列に突っ込んだようで、故意に起こした事件だと思う」と話した。
周辺には治安当局者らが多数配置され、現場を撮影しないよう住民らに促した。中国当局は社会不安が広がるのを懸念し、突発的な事件の情報統制を強めている。
うーん、ちょっと無責任じゃないでしょうか。これでは読者が「今回の事故も社会に不満を持つ人による無差別殺傷だった」と思うこと請け合いです。少なくとも地元警察は「運転操作の誤り」が原因だと言っています。それがウソかホントか知る由もありませんが、この警察発表への反論材料は「SNS上の投稿」と「近くにいたという高齢男性のインタビュー」以外に書かれていないのです。
確かに中国では去年秋ごろから社会に不満を持つ人による無差別殺傷が各地で相次いでいます。去年11月には広東省珠海で男が自動車を暴走させて35人が亡くなる事故がありました。また同月には江蘇省無錫市で男が多くの人を刃物で切りつける事件が発生し、8人が亡くなりました。いずれも私憤を社会にぶつけて事件を起こしたとみられ、中国では“报复社会”(社会に報復する)という言い方も生まれたくらいです。かと言って、今回の交通事故も同様かどうかは分からないでしょう。
確かに中国は政府にとって都合の悪いことは隠されがちです。だから日本を始めとする西側メディアが根拠を挙げて報道し続けないといけません。だのにこんな記事の書き方では。本当に操作を誤っただけだったならどうするつもりなんでしょう。中国政府から「西側メディアは事実をでっち上げて中国の中傷に勤しんでいる」と足元をすくわれかねません。私も中国ウォッチを生業とする人間の端くれですが、こういう記事はとても不誠実に感じます。
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