大学時代の北京留学で知り合い、爾来仲よくしているウイグル族の友人と新宿にあるウイグル料理店で食事をした。
行ったのは西新宿、というより初台に近い「シルクロード・タリム」という店。
何度か行ったことがあるが、異国情緒あふれる店内の雰囲気*1と日本ではそう食べられないウイグル料理が楽しめるとあって、まるでアトラクションのような店。
きょうはウイグル料理の代表的なものを一とおり注文。羊肉の岸焼き(シシカワプ)、ミートパイ(ゴシナン)、肉まん(ゴシマンタ)、手延べ麺(ラグメン)、大皿鶏(トホコルミス)、干豆腐(プルチャック・ウユツミス・ハミセイ)。
写真手前に写っているのが手打ち麺(ラグメン)で、私は特にこれが好き。留学時代に新疆ウイグル自治区を旅行したのだが、道中何度もこれを食した。中国語では”拉条子“*2と呼ぶが、その名のとおり小麦粉で作った生地を両手でこねこねと長く伸ばして作る麺料理で、各家庭で調理される。
このときの新疆旅行は私にとって忘れられない経験だ。なにしろ、それまで見てきた中国とはまったく異なる文化の土地だった。北京から36時間の長距離列車*3でまずウルムチに行き、沿線のトルファン、トクス、アクス……など途中下車しながら中国最西端・カシュガルへと向かった。
ウルムチは新疆ウイグル自治区の省都で、相当な都市化が進んでいた。しかしモスクやバザールの立ち並ぶ巷には、やはり「違う空気」が流れていた。
なんせ新疆ウイグル自治区は日本の4.5倍の面積を有するので、街と街の移動にも時間がかかった。列車で半日~1日かかることもあり、当時はスマートフォンも無かったので、乗客どうしおしゃべりする以外はとにかく窓の外を見ているしかなかった。果てしなく地平線が続く砂漠や、荒涼とした岩山の中を走っていると、まるで自分は月面にいるのではないかと感じた。
さらに中国最西端・カシュガルまで来ると、異文化の香りがさらに高かった。なんせ、すぐそこはキリギスやタジキスタンなのだ。大陸の広大さというものを肌で感じ、日本という島で暮らしていた自分の小ささを否応なく感じさせられたのを覚えている。
閑話休題。
実はきょう一緒に食事をしたウイグル族の友人が、まさに留学時代に新疆ウイグル自治区へ連れて行ってくれた友人なのだ。自治区のアクスという街に育ち、難関をくぐり抜けて北京の大学に進学した努力家。当時よく彼は「日本に留学したい」と口にしていた。私は金銭面などを考えて難しいだろうと思っていたが、彼は成し遂げた。そして今は日本で就職し、働いている。本当にすごいことだ。
北京に赴任する前にぜひ会いたいと言ってくれ、なんとかきょうそれがかなった。きょうの食事には妻も同席し、彼は「まるで自分の親戚が結婚したようだ」と喜んでくれた。
つとに伝えられる新疆ウイグル自治区の状況を鑑みると、友人が故郷にどんな思いを抱いているかは想像に難くない。私自身も彼と共に旅した日々を思い出すと、今後中国に赴任したとて、あんな気軽に自治区を訪れることができるのだろうかと思ってしまった。
別れ際にした彼の握手はとても固かった。彼の思いも抱きながら中国で働く決心をした1日。
ウイグル料理 シルクロード・タリム
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