きょうは台湾映画。ツッコミどころ満載でゲラゲラ笑えるんだけど、ちょっぴりウルッと泣けるシーンもあり、気付いたらエンドクレジット……時間を忘れさせるほど見入ってしまう映画だった。

【ネタバレがあります】

1秒先の彼女(台湾/2020)

郵便局で働くヤン・シャオチーは仕事も恋もパッとしないアラサー女子。おまけにせっかちで何をするにも人よりワンテンポ早い彼女は、どこか他人と「ズレて」いた。ある日シャオチーは街で出会ったハンサムなダンス講師とバレンタインにデートに誘われる。念願がかない胸を躍らせるシャオチーだったが、目が覚めるとなぜかすでにバレンタインの翌日になっていた。一体なぜ?秘密の鍵を握るのは、毎日郵便局に来ていた、常にワンテンポ遅いバス運転手ウー・グアタイだった……

邦題の『1秒先の彼女』もいいが、原題の『消失的情人節』(消えたバレンタイン)のほうが分かりやすい。日本版の予告編を見るとワンテンポ早いシャオチーと、ワンテンポ遅いグアタイのドタバタコメディーのように見えるが、本作はそうではない。あくまで消えて無くなったシャオチーのバレンタインの謎を解き明かす筋立てになっているからだ。

ストーリーの発想がとてもおもしろかった。前半パートで「なんじゃこりゃ?どういうこと?」と思っていたことが後半パートで見事に回収されるので、見ていてとてもすっきり。作品自体は2時間だが、その長さを感じさせないくらい夢中になる映画だった。

台湾でバレンタインというと2月14日よりも旧暦7月7日の七夕のほうが重視されている。だから映画の舞台は夏であり、登場する人たちもみんな半袖で涼しそうな格好をしている。途中海が何度も登場するのだが、とても牧歌的で見ていて心地よい。台湾、特に地方の風景はなぜあんなにもノスタルジックな気分にさせるのだろう。機会があればぜひロケ地を訪れてみたいなあ。

そして愛すべき登場人物たち。もちろん映画上の設定ではあるけど、ふとしたセンスあるリアクションにクスッと笑ってしまう。基本的にみんな北京語ベースの中国語を話しているのだが(台湾では「國語」と言う)、年配の人たちが登場すると一気に台湾語になって、そのリズム感も見ていて気持ちいい。どのキャラクターもかわいらしくて、とてもほっこりした。

ツッコミどころは満載なんだけど、そもそもフィクションのSFファンタジーという設定なのだから、難しく考えず楽しんだ者勝ちじゃないかと思う。

★★★☆☆

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