きょう見た映画の舞台は1960年代のアメリカ、黒人差別をテーマにした作品。人種や階級の壁を越えてお互いに心を通じ合う黒人と白人の友情のドラマを描いたストーリー。

1962年。天才黒人ピアニストは、粗野なイタリア系用心棒を雇い、〔黒人専用ガイドブック<グリーンブック>〕を頼りに、あえて差別の色濃い南部へコンサート・ツアーへ繰り出す。旅の終わりに待ち受ける奇跡とは? まさかの実話! 2019年3月1日(金)全国ロードショー

【ネタバレがあります】

グリーンブック(アメリカ/2018年)

黒人天才ピアニストのシャーリーは、まだ人種差別が色濃く残るアメリカ南部をめぐる演奏ツアーを企画する。道中の運転手兼ボディーガードとして雇われたのが腕っぷしの強いイタリア系のトニー。まるで異なる世界に住む2人は旅の当初は衝突ばかりを繰り返すが、困難な旅を通して心を通わせ友情を深めていく。

どこか粗野なイタリア系白人のトニーと、知的で上品な黒人ピアニストのシャーリー。

トニーはもともと黒人を蔑視していたが、他人の懐に遠慮なく踏み込んでいける性格が幸いして、シャーリーに対しても気遣いなくどんどんと突っ込んでいき、シャーリーに対する偏見が徐々に薄らいでいく。流れがとても自然で、黒人差別がテーマではあるものの、その重さを感じさせないストーリー展開でとても見やすかった。

シャーリーの「私ははぐれ黒人だ」というセリフがとても印象的だった。黒人であっても知的で裕福に暮らすシャーリーは黒人コミュニティーでもなじめない。一方の白人は教養があると思われたくてシャーリーのピアノ演奏を聴き、絶賛するも、それ以外の場所はシャーリーはあくまで黒人なのだ。白人のトニーもイタリア系を理由に警官から「イタ公」と差別的に呼ばれるシーンがあるなど、過去とはいえアメリカ社会の複雑に入り組んだ差別問題を見せつけられる。

しかし見終わって驚いたのは、この映画は実話に基づいていたということ。だからこそ細部の脚色に一部から批判の声も出ているようだが、いやはやすごい。実際の2人も生涯を通して友人であり続けたらしい。

映画を見てグリーンブックという存在を初めて知った。1936年から1966年まで毎年発行された、黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。その名は創刊者のヴィクター・H・グリーンに由来していて、映画でも2人はこの本を片手に旅を進める。

それはそうと、アメリカ音楽における多くの輝ける遺産がこうした時代の黒人から生まれたのだなあ。ジャズ、ラグタイム、ブルース、どれも私の好きな音楽ジャンルばかり。映画にも往年の名曲が多数登場したけど、ある種、最高の皮肉だと思う。

★★★★☆

関連記事