今日はいよいよ日本出国日。

午前9時のフライトだったので6時過ぎには空港に到着するよう向かったものの、チェックインカウンターは驚くほどの行列。中国の方が多いのかと思いきや、日本人も結構いて意外だった。今はまだビザがないと基本的に入国できないし、入国したって隔離が待っているという厳しさなのにねえ。みんなお仕事かしらん。

妻が空港まで見送りに来てくれ、荷物が多かったこともあってとても助かった。スーツケースだけでも2つ、それも相当な重さだったので*1、1人でコロコロ転がすのは大変だっただろう。

荷物を預けて「どこかでモーニングでもしようか」と空港内のスターバックスに。席に座って落ち着くも意外と時間がないことに気付き、購入したアイスコーヒーとサラダラップを掻き込んだらそそくさと保安検査場に向かった。

ここで妻とはお別れ。今後遅れて北京に来る予定だけど、しばらくは離ればなれの生活だ。無事に北京に到着したら連絡すると約束して、搭乗口へと急いだ。

チェックインカウンターの長い行列の割に飛行機は結構すいていた。

今回搭乗したのは左3列、中央3列、右3列の機体で、私は中央3列に座ったけど前後左右に人はいなかった。これも感染防止対策なのかなあ。頭上にある手荷物の収納棚は広く使えたし、何よりのびのび座れるのでとても助かった。

飛行機は台風14号を避けていくために南に大きく迂回して飛ぶルートだった。日本列島の太平洋沿岸を沿うように飛んで、そのまま上海の上空へ。窓から下をのぞくと黄土の影響で茶色く濁った黄浦江が見えた。

フライト中、機内がとても静かなのが印象的だった。中国へ向かう便なら今まで旅行帰りのチャキチャキ中国マダムたちが「日本でアレ買ったのよ」「これいいわよ」と爆買いの成果を大声で自慢し合っていたところだが、今や新型コロナウイルスの影響で訪日中国人観光客が激減したこともあってそんな人は皆無だった。それはそれで中国名物だったので、ちょっぴり寂しい気分。

フライトのもうひとつの楽しみといえば機内食だが、こちらも少々味気なかった。

搭乗の際に「機内食です」と言って渡されたのがパンやワッフルが入ったビニール袋。もちろんいただけるだけありがたいけど、うーん、こんなパンばかりじゃ口の中がパサパサしそう。それに、どうせならパンよりおにぎりとかごはんのほうが良かったなあ……って、はい、すみませんね、文句ばっかりのいやな客だね。それでも全部は食べきれず、機内では写真手前の炒り卵の載った惣菜パンと奥のピザパンの2つをいただいた。

およそ4時間のフライトを経て、北京首都国際空港に到着。機体から降りると、防護服に身を包んだ”大白”(ダーバイ)*2たちが出迎えてくれた。

到着後はいろいろやることがあった。

まず始めに「健康申告」というのがあり、タッチパネル式の液晶画面の前に立って過去2週間に発熱や咳といった症状がないかを答える。表示言語が選べたので中国語が話せない人でも困らなさそうだ。しかしスタッフは基本的にみんな中国語。相手が外国人だと分かっていても中国語で話しかけているようで、なかには何を言われているか分からず戸惑っているような日本人の姿もみられた。

最後は入国審査。通常時なら特にやりとりも無く「スタンプぽちっ」で終わることが多いのだろうが、いろいろ聞かれている人が多い印象を受けた。私の場合は「中国に来た目的は」「仕事です」「長期滞在ですね」「はい」の2往復で終わった。

総じて感じたのは、私は今この国でいうレッドゾーン*3にいるのだということ。飛行機から降りてきた人はマスクこそすれ、みんな普通な格好なのだ。しかし空港のスタッフたちはみんな防護服に身を包み、その顔さえ分からない。あくまで私たちは病原菌を持っている人間として扱われているのだなあとしみじみ感じ、思わず「バイオハザード」という言葉を思い出してしまった。

それだけに出入りも厳しいのかな、細かいところの清掃が行き届いていないようだった。入国審査のカウンターはガラスが曇るほどに汚れてしまっていて、職員の手元にあったパソコンもほこりでまみれ。あなたたちは防護服を着ているからいいかもしれないけど、私たちは中国について早々こんな環境下にいたらコロナになる前に別の病気にかかっちゃうよ。

預けていた荷物を受け取ったらバスに乗車。人によってはバスに乗り込んでから1~2時間待ったらしいけど、私のバスは乗車後ほどなく出発した。これから10日間を過ごす隔離ホテルへと向かう。

バスは空港を出発すると市街地を通り越して南下し、やがて郊外にやってきた。周りには建設途中のマンションらしき建物が並んでいて、うーむ、きっといいホテルではないんだな、ということだけは察しが付いてきた(^^;)。

ちなみに事前情報だと北京の隔離ホテルはひどいとすこぶる評判が悪かった。風呂場にウニかと見紛う髪の毛の塊が落ちていたとか、ベッドを横にずらしたらひまわりの種が大量に出てきたとか、とにかく清掃が行き届いていないとのこと。立派でなくてもいいから、清潔ではあってくれと祈る気持ちで向かった。

到着したのは明らかに「ホテル」ではない場所だった。見た目はアパートかマンションのようで、売れ残った住宅を隔離施設に転用しているのかな。建物の雰囲気からして、おそらくコロナ禍になって以降に建てられたような印象。

ちなみに入居前にN95マスクが配られ、着用しているマスクの代わりに付け替えるよう命じられた。

ようやく部屋に入ったのは午後4時過ぎ。

部屋は留学時代の学生寮を思わせるような作りだった。それなりに清潔感はあるものの、ところどころ剥がれたフローリング(裸足で引っかかると痛そう)や壁を白く塗ったペンキが窓枠の金属にまで散っているところなど、中国っぽい詰めの甘さが随所に(^^;)。

部屋の設備としてはテレビ、エアコン、Wi-Fi、ドライヤー、あとはちり紙やトイレットペーパー、それに1.5リットルの水が8本など消耗品は置いてあった。一方で冷蔵庫や電子レンジは無し。アメニティーグッズは箱の外までキツいにおいのする石鹸とシャンプーがあったものの使う勇気はなく、日本から持ってきていた普段使いのものに頼ることにした

夕食は1日3食で、部屋の前に係員が置いていってくれる仕組み。

初日の夕食はこちら。煮込んだ骨付きの鶏肉、ニンニクの芽と牛肉を炒めたもの、豆もやしの和え物、あとは白米とマントウ。味はあまり期待していなかったんだけれど、昼が機内食のパンを2つ食べただけだったからか、思っていた以上においしく感じた。

ちなみに事前に聞いていたホテル隔離は一定の人数ごとにWeChat*4でグループを作らされ、もし不明点やホテルへの要望があればグループの中にいる担当者とやり取りすると聞いていたが、私の場合は全くそんな説明がなかった。むしろ中国語しか書かれていない「宿泊案内」と書かれた3枚の紙が渡されただけ。何か不明点があればここに聞けと電話番号が書かれているのみで、これ、中国語ができない日本人は困るんじゃないの?と思ってしまった。

とりあえず朝が早かったこともあり、夜は早めに就寝。ベッドに入ってから、おそらく自分でもびっくりするほどすぐ眠った。

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References
*12つのうち1つは無料の重量制限を超えていたため、6000円の超過料金。もちろん織り込み済みではあったけれど、やはり高いねえ。
*2もともとはディズニー映画『ベイマックス』に登場する白くて大きいロボットのニックネーム(中国語)だが、今は新型コロナウイルスの感染対策用の白い防護服を着た人を呼ぶ愛称として使われている。
*3汚染区域。
*4中国で広く使われているメッセンジャーアプリで、中国版LINEなんて呼ばれている。