日曜出勤。例によって今日も仕事で帰宅が遅くなってしまった。

北京の地下鉄は日本に比べて終電が早く、23時台には終わってしまう。私の新居は会社から歩くと1時間近くかかるので、タクシーを利用することにした。

中国はタクシー料金が安いため、留学時代にはよく乗った。人通りの多い場所では客同士タクシーの取り合いで、自分が手を上げて止めたのに隣から突然現れたおばちゃんに横取りされるなんてことが多々あった。行き先を告げてもマイナーな場所だと運転手から「知らん」とにべもない態度を取られたり、ひどいときは乗車拒否されたりしたものだ。やっと乗車できたと思ったら実は“黑车”(白タク)で、驚く勢いでメーターが上がっていき、2倍近い運賃を要求されたことも。

とは言え、おしゃべり好きな運転手に当たると会話が弾んだものだ。私が日本人だと分かると「ミシミシ!!カイルー!!」*1なんて自慢げに話してくる。運転手がチャキチャキの北京っ子だと、あまりに強い北京訛りで中国語がほとんど聞き取れなかったこともあった。慣れるまでは大変だったものの、今思えば中国語の良い特訓だったように思う。

しかし、そんな北京のタクシーも今は昔。

今は基本的にスマートフォンで配車することになっていて、流しに乗ることはほぼない。目的地も事前にアプリで入力する仕組みになっていて、黙っていても連れて行ってくれる。運転手とのやり取りは発生せず、余計な会話もない。

便利だけど、今思い返すと、あの経験から学んだものも多かったのだ。技術の進歩はそうした学びの場を奪ってしまう一面もあり、それはそれで寂しいところ。一長一短ですね。

References
*1「ミシミシ」は「飯、飯」(めしめし)で、「カイルー」(“开路”)は「帰る」。日中戦争に関する戦争映画なんかに登場する日本兵が台詞として多用していて、日本語を学んだことのない中国人にもよく知られている。