お昼に仕事で付き合いのある韓国の方と食事をご一緒する。この方が韓国に帰国されることが決まり、後任の方を紹介してくれたのだ。例によって我々がやり取りする言語は中国語。日本語でなければ韓国語でもない。思えば、中国語が母語でない者同士が中国語で会話するとは興味深い体験だ。
興味深かったのが、韓国の方が“休职”という言葉を使ったことだ。読んで字の如く「休職」と言いたいのだろう。しかし辞書を引くと分かるが、中国語に“休职”(休職)という言葉はない。いや「ない」ことはないかもしれない。耳で聞けば「職を休むのだな」ということは中国人にも分かるだろう。しかし意味としては、悪いことをして「休まされる」といったニュアンスに感じる人が多いんじゃないかな。日本語でいうところの「停職」といった感じ。
そういう意味では、日本語の「休職」は別に悪いことをした場合に限らないし、むしろ権利として職を休むことを指す。
きゅうしょく【休職】
公務員や会社員がその身分・資格を保ったまま一定期間職務を休むこと。明鏡国語辞典(大修館書店)
ちなみに韓国語では「休職」のことを“휴직”(ヒュージッ)と言う。漢字で書くと「休職」だ。意味は日本語と全く同じで、おそらく今日ご一緒した韓国の方は韓国語の「休職」をそのまま中国語で発音して“休职”と言ったのだろう。日本語と韓国語の「休職」は、正しくは中国語で“停薪留职”と言う。意味としては「給料を停止し職を留める」。ちょーっと、まどろっこしい。
漢字語を見ると、日本語と韓国語には共通した語彙が多い一方、中国語は独特なものが多い。
例えば「作動」という漢字語。韓国語でも“작동”(作動)と言い、日本語で「作動する」と言う場面はほぼそれで置き換えられる。
- 機械が作動する=기계가 작동하다/キゲ(機械)ガ チャックドン(作動)ハダ
- 防犯カメラ作動中=방범카메라 작동중/バンボム(防犯)カメラ チャックドンジュン(作動中)
- 誤作動=오작동/オーチャックドン(誤作動)
中国語には「作動」という言葉がない。直接漢字で“作动”と言っても通じず、それぞれのパターンで言い換える必要がある。
- 機械が作動する=机器启动了(機器が起動した)
- 防犯カメラ作動中=您已进入监控范围(あなたは監視エリアにいます)
- 誤作動=失误(ミス)、错误操作(操作ミス)、误动作(誤動作)
つまり日本人と韓国人が中国語で会話しようとするとお互いの言語にはそれぞれ共通の語彙が存在するのに、中国語では訳し分ける必要があるのだ。この点、日本人と韓国人が中国語で会話しているのに、中国人だけ「ん?どういう意味?」となったら面白いだろうなあ。