自宅近くにショッピングモールがあって、その中に「奈雪の茶」という店がある。中国各地で展開しているお茶ドリンク専門のチェーン店で、いつも若い客で賑わっている。
この「奈雪の茶」、そのネーミングといい、「NAYUKI」とローマ字まで振っているので日本のチェーン店かと思いきや、歴とした中国のチェーン店。店名にひらがなの「の」を使っていることもあり、日本発のチェーン店だと思い込んでいた(思い込んでいる)中国の人たちは多いと思う。
それが、今日ショッピングモールで「奈雪の茶」の前を通りかかると看板が変わっていることに気付いた。「日本的要素」がすべて取っ払われていたのだ。
今までひらがなの「の」が使われていた部分は「的」に置き換えられ、「NAYUKI」とローマ字が振られていた部分は「NAIXUE」という中国語の発音表記に。
こうした「日本的要素」を取っ払う動きは他でも去年頃から相次いでいる。そのひとつが「ユニクロ」、「ダイソー」、そして「無印良品」のいいとこ取りをして大成功を収めた「メイソウ」。
初期はこんなふうにカタカナで「メイソウ」*1、それに日本漢字で「名創優品」と書いた看板を掲げ、悪い言い方をすると「日本ブランド」を騙っていた。それが去年ぐらいから中国のSNSで「日本風」であることに批判が相次ぎ、「もう日本風はしません」と謝罪・表明する事態に追い込まれたというわけ。
私が北京に赴任してから見かける店舗からは「メイソウ」というカタカナ表記は取っ払われているし、今まで日本漢字で「名創優品」だったのも、中国の漢字(簡体字)で“名创优品”と書かれるようになっている。つまり「日本的要素」を取っ払った結果がこれなのだろう。
おそらく「奈雪の茶」から「日本的要素」が取っ払われたのも同じ理由なんだと思う。でもねえ……ここまで散々「日本風」に媚びて儲けてきたのに、この開き直り。真似るなら真似るなりのプライドというか、ご本家に対する敬意みたいなものが全くないんだなあ。
他にも「ファーウェイ」。この販売店のインテリアから、ひとつひとつの商品(例えばスマートウォッチの「HUAWEI WATCH」やワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds」)、そして新商品の発表会のスタイルまで、はっきり言ってすべて「Appleの真似っこ」。
いや、とはいえ世に数多あるAndroidのスマートフォンだって「iPhoneの真似っこ」から始まったものだし、そもそも世の中に全くのゼロから創造されるものなんてほとんどないのは分かっている。ただ……ちょっとでも「疚しい」と思っているならまだしも、この人たちは全く思っていないんだろうなあと(笑)。ここまで模倣し倒していると、いっそ清々しく思えてくるくらい。
確かに中国は発展したけれど、こういうところを見るにつけ「果たしてプライドがあるんだか、ないんだか、この人たちは」という気分になってしまう。ただひとつ思うのは、ご本家・模倣元に敬意の払えない社会ではイノベーションというものは起きないんじゃないかと……感じるところです、はい。
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*1 | そもそも本当に日本ブランドなら「迷走」と連想しかねない「メイソウ」なんて名前を店舗名にはしないと思うけど(^^;)。 |
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