さて、新年度だし新しいことを始めよう……ということで、今日からブログの文章を「敬体」(です・ます)に変えてみたいと思います。独りよがりな(笑)ブログではなく、硬派に読めて、その実やわらかい文体を目指していきます。

今日は「清明節」の祝日を利用して天津に日帰り旅行に行ってきました。

乗ったのは“和谐号”(和諧号)。“和谐”というのは中国語で「調和がとれている」とか「和やかである」という意味です。これだけ見ると日本の「のぞみ号」「ひかり号」みたいなネーミングに聞こえますが、実のところ、この言葉自体は2004年に当時の中国政府が打ち出した“和谐社会”という、矛盾のない調和のとれた社会のことを指す中国のスローガンに由来します。

まず向かったのは伊勢丹。天津には伊勢丹があって、地元では「百貨店=伊勢丹」と認識されるほど親しまれているそうです。日系だけあって、こちらの伊勢丹には大手回転寿司チェーン「はま寿司」があり、ぜひ行ってみたいと思っていました。北京にも回転寿司はあるものの、どれも中国資本の「ちょっと違う」感があって、ぜひ日本のクオリティーを味わいたかったのです。

ウワサには聞いていましたが、いやあ、びっくりする人が待っていました。

整理券の番号順に案内していて、ちょうど私たちが着いた頃は300番台前半。入手できた整理券は469番でした。つまり私たちの前に100組以上が待っているということですよね。しばらく店の前に並んだ丸椅子に腰掛けて待っていましたが、あまりに進まないのでデパート店内をしばらくうろうろすることにしました。

蔦屋書店がありました。並んでいる書籍の言語こそ違えど、コンセプトは日本国内のそれと同じ。ところどころ日本語の書籍も並んでいたかな。ここ、中国の蔦屋書店1号店なのだそうです。

男性向け月刊誌「POPEYE」や女性向けだと「anan」など、日本の雑誌がたくさん並んでいました。日本のトレンドを紹介する雑誌が中国でどれほど需要があるのかと感じてしまうところですが、こうして見るとスタイリッシュな表紙のものが多いですね。わざわざ日本から雑誌を取り寄せ、蔦屋書店に並べる理由も何だか頷けます。書店の雰囲気を作るのに欠かせない存在なんだなあ、というか。何でもインターネットで情報収集できる今、むしろ雑誌は今後「オシャレツール」としても扱われるようになっていくのかもしれません。

アデリアレトロのグラスも並んでいました。かつて昭和の家庭で使われていたような柄のグラスをリメイクした製品です。私はこういうレトロな商品が大好きで、日本でいくつか購入して持っていました。荷物になると思って中国には持ってこなかったのですが、いやあ、今思うと持って来れば良かったなあ。海外では80年代の日本のシティ・ポップが人気を集めていると聞きますが、今後はこうした昭和の雑貨もウケてくるかもしれませんね。

日本の文房具もたくさん売っていました。

こうして並ぶときれい~。日本の文房具ってポップというか、遊び心あふれるというか、カルチャーの一種ですよね。デザインだけでなく実用性、利便性があって魅力的。海外の方が日本旅行の土産に文房具を買って帰るっていうのも、よく分かります。

整理券を取って約2時間半……ようやく「はま寿司」に入れました。時間は午後2時前で、お腹はぺこぺこ。それでも私たちの後ろにはまだずいぶんの人が並んでいました。天津ぐらいならそこら中に回転寿司店はありますが、やはり日本資本の「本場の回転寿司」が食べたいというところなのかな。

ただ、ここの「はま寿司」は回転せず、タブレットで注文する度に商品がレールで運ばれてくるシステムでした。ストレートレーンと言って、日本の「はま寿司」では結構導入されているそうです。なるほど、確かに色とりどりの寿司が回る様子は見ていて楽しいですが、食べられずに時間のたった寿司は廃棄しないといけなくなるでしょうね。食品ロスの削減に繋がるし、客としても握りたての寿司が食べられるならメリットが多いのかもしれません。

寿司はいくつか魚の切り方が雑に感じるものもありましたが、肝心な味はほぼ日本と同じでした。

何よりもうれしいのは、マグロやブリといった日本では当たり前の魚が食べられたこと。中国の寿司はサーモンか、そうでなければホッキ貝なんですよね。サーモンは私も好きですが、やはりそれだけはちょっと寂しい。ここの「はま寿司」は他にイクラやネギトロの軍艦巻きなど、定番の寿司も揃っていました。マグロやブリといった基本の寿司は10元(約190円)で、少し良いものになると15元(約280円)でした。日本よりは少し高めですが、中国で同じクオリティーの寿司にありつけると思えば安いものです。ぜひ北京にもできないかなあと願うばかり(^^)。

昨日の北京は珍しく雨が降り、今日の午前も曇り空でどうなるかと思ったのですが、午後になると晴れてきました。青空が見え、日が照ってくると暖かくて気持ちが良いです。遠くに“天塔”(天津テレビ塔)もくっきり見えます。

続いて向かったのは「周恩来鄧穎超紀念館」。名前の通り、かつて中国の首相を務めた周恩来氏と、その妻である鄧穎超氏について伝える博物館です。入館料無料ですし、一応お勉強もということで。

着いたのは閉館40分前でしたが、人はぞくぞく訪れていました。

資料が豊富で、ゆっくり見て回ろうとすると相当時間がかかるかと思います。私たちの場合は閉館時間が迫っていたのでそそくさ見て回りましたが、もっと時間をかけても良かったかもしれませんね。

記念館を出ると小型の旅客機が展示されていました。イリューシン14という、旧ソビエトから贈られた周恩来氏の専用機だそうです。

最後に五大道を訪れました。もともとイギリス租界だった場所で、1800年代から1900年代前半のイギリス式の建築物や町並みが残っています。

歩くと結構広いので、ぐるっと見て回れる馬車に乗りました。1人50元(約1000円)、観光地であることを考えれば妥当な値段です。夕方だったこともあり、並ぶことなく乗れました。馬たった1頭で客車2台を引くんだからすごい力です。

いざ走り出すと確かにイギリスのような町並みが広がっていて、数年前のイギリス旅行の際にこんな風景を見たなあと思い出します。そんな歴史ある建物の前に“烧烤”(串焼き屋)や“铁板烧”(鉄板焼き)の出店が並んでいるのを見ると、一気に「中国の世界」に引き戻されますが(^^;)。

この馬車、ガイドさんがずいぶんな早口で町並みの解説をしてくれます。中国語を解さない人には何の助けにもなりませんが、広い五大道をいっぺんに見て回れるのでそれだけでもオススメです。

天津は高速鉄道を使えば北京から30分で来られるし、生活する上での便利さも北京とそう変わりません。しかし実際に訪れると、やはり多くの違いに気付きます。例えば北京では見かけなくなった屋台がそこら中に残っているんですよね。あと物乞いの姿もちらほら。いずれも北京ではとうに一掃されてしまいました。中華人民共和国の首都たる北京に、営業許可や衛生の面で「グレー」な屋台や物乞いなんていてはいけないのです。

天津には私が留学していた頃の「少し前の北京」の姿が残っているように感じました。夏の屋台で串焼きとビールをいただきながら店主のおっちゃんおばちゃんと会話するの、楽しかったなあ。私の両親が遊びに来たときも屋台に一番喜んでくれました。物乞いも、実は「ビジネス」だと当時から広く言われていましたが*1妙に人間くさいじゃないですか。嫌いになれないというか、愛着が湧くというか。そんな景色が今も天津に残っているんですよね。

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References
*1物乞いの「ふり」をしてお金を稼いでいる、と言う人はよくいたものです。