中国では今日から労働節(メーデー)の連休が始まりました。
当初は上海ディズニーランドでも行こうかしらと思っていたのですが、上海行きの高速鉄道のチケットはほぼ売り切れ、飛行機にいたっては片道2000元台(約4万円)という始末。まあ、動き始めるのが遅かった私が悪いんですけど、いつでも行ける上海に2000元を払って行くくらいなら、普段行けないところに……と思い、四川省に行くことにしました。
まず最初の目的地は透き通った水が流れる美しい峡谷で知られる九寨溝です。
行きは北京首都空港から九寨黄龍空港までひとっ飛び。九寨黄龍空港は2003年にできた空港で、私も12年前の留学時に利用しました。空港ができるまでは成都からバスで10時間かけて向かうしかなかったわけで、便利になったものです。
もちろん、今でもバスで向かう人はいます。値段が全然違うんですよね。なんせ、バスなら飛行機の10分の1くらいの値段で乗れるんですから。私もケチな人間なので、時間があればバスにしていたかもしれません。社会人になった今、時間をお金で買っていると考えておくことにします。
北京から九寨溝までは3時間半ほど。私はひと眠りした後、あらかじめスマートフォンにダウンロードしてきたNetflixのドラマを楽しむなどして時間を過ごしました。
着陸間際になると、窓の景色には一面の雪山が広がっていました。九寨黄龍空港は海抜3400メートルに位置するので、周りは一面の高原なんですよね。日本でこの雪山のスケールは見られません。周りの乗客も「ワー」と声を上げて写真を撮っていました。
いざ空港に到着すると、やはりちょっと空気が薄いような気がします。なんせ標高が富士山の山頂と数百メートルしか違わない場所にいるわけですから、当然っちゃあ当然かもしれません。
あらかじめ宿泊する宿に送迎をお願いしていたので、到着するとドライバーのおばちゃんから電話がかかってきました。宿で雇われている方かと思ったのですが、いざ乗車すると普通のタクシー。おそらくおばちゃんは普通のタクシードライバーで、運賃は宿持ちで手配したということなんでしょうね。
空港から九寨溝の中心部までは車で1時間40分ほど。途中、ケータイの電波も無くなるような場所をひたすら走ります。窓から見える景色は日本で見られない壮大な自然。運転してくれたドライバーのおばちゃんがおしゃべり好きな方で、道中ずっとあれこれ説明してくれました。
今夜泊まるのは「闊博・瓊熙山居」(“阔博·琼熙山居”)という宿。雰囲気といい、名前といい、チベット文化が取り入れられているようです。今年の春節にオープンしたばかりのようで、Ctrip(“携程网”)で予約しました。
いざ入ると、果たして宿の女将さんはチベット族の方でした。でも漢民族と言われても分からないような出で立ち。おそらく第一言語もチベット語より中国語なのかもしれません。ホテルのロビーに飾られた絵画や伝統工芸をひとつひとつ説明してくれたり、お茶を勧めてくれたりと、とても親切でした。女将さん曰く「ホテルというより民宿を目指しています」とのこと。施設も立派だし、部屋もきれいですが、まさにこの距離感が民宿なのかもしれません。
こちらの宿、5、6年前からオープンさせる構想はあったそうです。しかし2017年に九寨溝で大きな地震があり*1、やっと復興し始めたと思ったら今度は新型コロナウイルスの感染拡大。ようやく今年の2月にオープンできたと教えてくれました。
オープンしたてなこともあって女将さんは気合いが入っていて、みんな親族だという従業員も女将さんを支えようとしているのがよく分かりました。
いざ宿から外に出ると、私の知っている九寨溝とは全く違う景色が広がっていました。私が12年前に訪れたときはこんなに賑やかではなかったんじゃないかなあ……宿も店もここまで無かったように思います。夜になると真っ暗で、ああ、秘境の世界に来たんだなあと感じたものでした。それが今や建物がこんなに増えちゃって、電飾でギラギラです。申し訳ないですが、旅情が削がれるというか、残念な気持ちになってしまいました。観光客の勝手な感想です。
極めつきはこれ。ラスベガスやマカオのカジノか、と思わせる佇まいです。電飾がギラギラしているだけでなく、重低音の響く音楽もジャンジャカ鳴っています。こちら、宿まで運んでくれたタクシードライバーのおばちゃんにも勧められたのですが、ステージショーが楽しめる「九寨千古情景区」という施設だそうです。
ギラギラしたネオンで“一生必看的演出”(一生で必ず見るべきステージ)なんて書いています。
この「九寨千古情景区」、少数民族の踊りや雑技団の芸だとかド派手なショーが繰り広げられるそうで、九寨溝の宝塚なんて呼ぶ人もいるそうです。後半は2008年の四川大地震をテーマにしていて、演出として観客席が揺れたり最後には全身で犠牲者に祈りを捧げたりと、見る側も一体となってショーを楽しめることからそこそこ人気はあるそうです。
この施設のおかげで就業できている方もいるでしょうし、それで地元の経済が潤っている面もあるかもしれません。大自然に囲まれた秘境っぽさを楽しみたくて九寨溝に来たわけですが、たった数日間しか滞在しない私みたいな人間が「九寨溝は秘境であるべき」と考えるのは、とってもおこがましいのかもしれませんね。
夕食はヤクの肉が楽しめる鍋(“牦牛肉骨汤”)をいただきました。
地元の人が楽しむ店というよりは観光客を相手に商売をしているような店でしたが、ここまで賑やかになった九寨溝ではしようがないでしょう。初めて食べるヤクの肉は臭みがなく、赤身が多いので健康的なお味でした。ちょっと硬いように感じましたが、品質によるものなのかな。地ビール(“青稞啤酒”)もいただき、お腹いっぱいで満足満足です。
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*1 | 2017年に発生した、九寨溝を震源とするマグニチュード7.0の地震。19人が亡くなったほか、九寨溝の池も一部が決壊して干上がるなどの被害が出たそうです。 |
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