言わずと知れたスタジオジブリの名作「天空の城ラピュタ」。日本では1986年に公開された宮崎駿監督の作品ですが、実は今月1日から中国で公開されていて、今日見に行ってきました。しかし30年以上前の作品がなぜ今になって公開されるのでしょう。

天空の城ラピュタ。 原作・脚本・監督 宮崎 駿 プロデューサー 高畑 勲 音楽 久石 譲 主題歌 井上あずみ 声の出演 田中真弓 ⋅ 横沢啓子 ⋅ 初井言榮 ⋅ 寺田 農 ⋅

スタジオジブリの公式ホームページによると「ジブリ作品が中国本土で正式に上映」されたのは2018年公開の「となりのトトロ」なのだそうです。つまり中国でもジブリ作品はとても有名ですが、皆さん今まで映画館で見たことがなかったわけですね。日本で公開された当時、中国はまだ経済的にも貧しい国でしたから無理もありません。おそらくビデオやDVDでしか見たことがなく、それさえも正規版だったのか海賊版だったのか、という世界かもしれません。

「天空の城ラピュタ」(スタジオジブリ公式ホームページより)

今や中国は世界2位の経済大国となりました。コロナ禍も明け、往年の名作を公開することで映画館への客足を回復させたいという狙いがあるのかもしれません。確かにいくらビデオやDVDで見ていたって、お金を払ってでも「映画館の大きなスクリーンで見たい!」という人はいるでしょうね。私がまさにそんな感じです。小さい頃から「天空の城ラピュタ」、何十回も見てきましたが映画館で見たことがないんですもの(生まれる前でしたから)。

ただ調べてみるとインターネット上には「1990年代に『天空の城ラピュタ』を上海などの映画館で見た」という声もちらほらありました。はて?と思って検索すると、1992年に中国で「天空の城ラピュタ」が上映されたのは事実のようです。同年には日中国交正常化20年を記念して「となりのトトロ」も上映されているようで、これらがスタジオジブリに忘れられているのか、それとも異例扱いされているのかは分かりませんが。

【ネタバレがあります】

天空の城ラピュタ(日本/1986)

なぜ6月1日に中国で公開されたかというと、この日が中国では「こどもの日」(“儿童节”)なんですね。それに合わせたのでしょうが、いざ映画館に来てみると観客はほとんどが大人で、子どもは少数でした。どちらかというと「作品を昔見たことがあり懐かしくて見に来た」という人が多かったのかもしれません。

「天空の城ラピュタ」(スタジオジブリ公式ホームページより)

先ほども書いたように、私は小さい頃から何十回と見ましたが(セリフもスラスラ出てくるくらいです)どれも日本テレビの「金曜ロードショー」なんですよね。実際「天空の城ラピュタ」の興行収入は振るわなかったようで、2016年に「レッドタートルある島の物語」が公開されるまでジブリ作品としてはワースト1位だったそうです。きっと公開当時に映画館で見たという人は少なく「金曜ロードショーでしか見たことがない」という日本人は多いんじゃないかと思います。

いざ映画館で見ると、やはり印象が全然違います。大きなスクリーンもですが、最も違うと感じたのは音響でしょうか。「このシーンはこんな音楽だったっけ?」という場面が多かったです。久石譲さんの音楽はすごいですね、本当に。

「天空の城ラピュタ」(スタジオジブリ公式ホームページより)

あと、つくづく感じたのが「この作品を日本人が作った」というのが改めてすごいなあと。宮崎駿監督は作品の舞台について、後に「イギリスのつもりで設定した」と語ったそうです。建物、服装、食事、どれひとつ取っても日本と全く異なる世界観なわけです。こんなことを言ったら失礼ですが、中国で「天空の城ラピュタ」は生まれなかっただろうなと感じました。

中国で近年になって公開されるジブリ作品は毎回、オリジナルポスターを展開しています。今回のポスターも雰囲気が良いですね。

中国の映画館はエンドクレジットになると館内の明かりがつき、みんな最後まで見届けることなく帰ってしまいます(映画館スタッフが入ってきて、掃除を始めちゃうんです)。ただ今回の「天空の城ラピュタ」は「君をのせて」の曲が始まると、最後まで誰も立たなかったのが印象的でした。

私、小さい頃の夢ってパイロットだったんですよね、幼稚園くらいのことですけど。こういう映画を見ると自由奔放に空を飛ぶ仕事をしたかったな~と思います。そんなことを考えるときの自分はちょっと弱っているということを経験的に知っています。いかんいかん。

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