昨夜遅くに九寨溝から成都に移動していたので、今日は朝から観光。まず向かったのは「寬窄巷子」(かんさくこうし)。清の時代から残る古い町並みをリノベーションした観光スポットです。

しかし……まあ、想像通りなのですが、芋洗い状態でした。前に進めません。

こちらで売っているのは“兔子头”(「兔子頭」)。読んで字の如く「ウサギの頭」です。

一瞬ギョッとしてしまいますが、成都では名物小吃なのだそう。ここ「寬窄巷子」だけでも何店舗もありました。見てみると、調理されているものの、あの飛び出た歯……いやあ、ウサギの頭そのもの。ちょーっと食べるには勇気がいりそうです。

ここ「寬窄巷子」は数十分歩いただけでギブアップしました。楽しむ前に人の多さに酔ってしまいます。早めにお昼にしようと思い、タクシードライバーさんに電話。実は、九寨溝でお世話になったタクシードライバーのおばちゃんから友人ドライバーを紹介してもらっていたのです。電話をかけると、出たのはコテコテの四川訛りの中国語を話すおっちゃんでした。おすすめの昼食場所を案内してもらえないかと頼んだら二つ返事で快諾してくれました。

どんなものが食べたい?と聞かれたので、地元料理で、観光客向けでなく、安くておいしい店……という私のオーダーを受けて連れて行ってくれたのは「陳氏涼粉」という店。

屋外にテーブルとイスがズラッと並べられ、食事をする人たちで賑わっています。ずいぶん敷地は広いのですが、席を探すにも一苦労するほど。大人気の店だということはよく分かりました。客も店員も見るからに地元の人たちで、チャキチャキの四川語が響き渡ります。

料理は注文式ではなく並べられた品々を勝手に持って行くスタイル。案内してくれたタクシードライバーのおっちゃんに、会計時に困ってしまわないのかと聞いたら「そんなの皿を見りゃ、なに食ったかは分かるよ!」とのこと(^^;)。

おっちゃんが切っているのは、成都名物の「樟茶鴨」。アヒルを燻製にしたもので「四川ダック」とも呼ばれているそうです。大きな中華包丁でザクッ!ザクッ!と勢いよく切っていました。これで40元です(約780円)。

料理のチョイスはタクシードライバーのおっちゃんに勧められるがまま。四川ダックこと「樟茶鴨」、「肝腰合炒」(レバー炒め)、「圓子湯」(肉団子のスープ)、そして店名にある通り、ここの名物「涼粉」も取ってきました。「涼粉」とは緑豆、えんどう豆、インディカ米などを原材料として作ったところてん状の料理で、こちらも四川名物です。

成り行きでおっちゃんも一緒に食事をすることになり、さあ食え食えと言わんばかりに料理を私たちの皿によそってくれます。中国の人はこの“让菜*1が好きなんですよねえ。

しかし、どれも絶品でした。特に「樟茶鴨」のおいしいこと、おいしいこと。おっちゃんに「こりゃビールに合いますね」と伝えると「じゃあ頼むか!」と言って、ビール1本を注文(^^;)。もちろんおっちゃんは車の運転があるので飲みませんが、私は昼からいただいちゃいました。「涼粉」もつるっとした食感とたっぷりかかったソースがたまりません。名物だけあって、おいしかったです。

店のすぐ近くには茶舗もあって、こちらも賑わっていました。タクシードライバーのおっちゃん曰く「食事をしたら、こっちでのんびりお茶を楽しむんだよ」とのこと。今日は日差しが強く、立っているだけで汗ばむ陽気でしたが、こうして日陰にいると涼しいです。

皆さん、ビールジョッキでお茶を飲んでいます。賑やかに過ごすわけでもなく、みんなボーッとしているようでした。贅沢な時間の過ごし方だなあと、羨ましくなります。

こちらの方々は麻雀を楽しんでいました。中国の麻雀牌って、日本のものより一回り大きいんですよね。そして写真で見ると分かるように、捨牌は真ん中に適当に置いちゃいます。中国の麻雀ルールにはフリテンがないので、きれいに並べる必要がないんですよね。日本の麻雀とは別ゲームと言っていいほどルールが違うそうで、私もぜひ覚えてみたいなあと思っています。

ミーハーですが、せっかく四川省に来たのだから……ということでパンダも見に来ました。「成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地」(“成都大熊猫繁育研究基地”)です。こちらもすごい人が来ていました。

気温が高かったので、パンダは基本的に屋内にいました。いや~ん、かわいい。まるで中に人間が入っているのかと思わせる佇まいです。手を器用に使って竹をおいしそうにほおばっています。

こちらのパンダは(写真では分かりづらいですけど)仰向けにゴロンと転がって笹を食べています。

このパンダ基地は敷地がとても広く、結構な距離を歩きます。暑かったこともあり、アイスを食べて小休止。パンダをかたどったかわいいアイスで、抹茶味をいただきました。みんな考えることは同じなようで、アイス屋さんには人だかりができていました。

このたび中国に赴任して改めて感じていることなのですが、中国の方々は写真やビデオを撮るのが本当に好きです。特にスマートフォンが普及してから拍車をかけているような気がします。

私も撮影は好きなのでエラソに言えませんが……中国の方々のそれはちょっと度を超えているように思います。どこに行ってもみんな、スマホ、スマホ、スマホ。挙げ句の果てには、撮影できると満足して実物を見ずにプイッと帰っちゃう人もいます。今年1月にユニバーサル・スタジオ・北京に行ったときのことですが、とあるアトラクションに途中客の写真を撮影してくれるサービスがあったんです。いざできあがった写真を見ると、私の前に座っていた中国人の列はみんな掲げたスマホに顔が隠れちゃっていました。

私はこういう場面に出くわすたびに、撮るなら自分たちの側ではないか……と思います。例えば家族連れで来ているなら、パンダではなく、パンダを見て喜ぶ子どもの方を撮ってほしいなあ……って。だってパンダにせよ、遊園地のアトラクションにせよ、インターネットでちょっと検索すれば(他人が撮影したものですが)写真やビデオはいくらでも出てきます。けれど自分たちの写真やビデオは自分たちにしか撮影できないのです。

いや、私も人のことを言えないのは分かっています。観光地に行けば「あれも撮らなきゃ、これも撮らなきゃ」って気持ち、確かに湧いてきます。もしかすると、写真を撮らないという選択も旅にあってもいいのかもしれませんね。

パンダ基地を後にし、夜は地元・四川料理をいただこうと「情妹妹乾鍋鍋」(“情妹妹干锅锅”)という店にやってきました。インターネット上で評価が高く、順番待ちもしているほど。あらかじめネット上で順番待ちの整理券を入手していたので、到着後数分で案内してもらえました。

本当は四川名物のホイコーローをいただこうかと思っていたのですが、あいにく売り切れ。代わりの肉料理として、こちら豚肉を炒めた料理を注文。見た目ほど辛くなく、にんにくがよく効いていてビールが進みます。

四川料理といえば麻婆豆腐?という、ずいぶん単純な発想から注文した料理。ただ料理名は「麻婆豆腐脳」となっていて、確かに食べていると脳らしき食材が入っています。おそらく豚の脳ですね。白子のような味わいでした。

こちらは春雨を炒めた料理。こちらも味がしっかり付いていて、ビールが進みます。

四川料理と言えば激辛というイメージがありますが、今日お世話になったタクシードライバーのおっちゃん曰く「激辛なのは重慶で、四川は小辛(“微辣”)だ」と言っていました。確かに、こちらでいただいた料理はそこまで辛くありません。というより、おっちゃんは「四川料理には辛くないものもたくさんある」と言っていましたから、料理によるのかもしれません。

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References
*1料理を客に取り分け、すすめること。