1987年公開の映画「ラストエンペラー」を見ました。清朝最後の皇帝で、後に満州国の皇帝にもなった愛新覚羅溥儀の一生を描いた作品です。以前にも一度見たことがあるのですが、まもなく始まる労働節の連休を使って、かつて満州国の首都が設置された吉林省・長春に行こうと考えていることもあり、予習を兼ねて再度鑑賞することにしました。

ラストエンペラー(伊・中・英・仏・米合作/1987年公開)

以下、映画のネタバレがあります。

私が初めて作品を見たのは中国語を学び始めて間もない高校生の頃です。中国語の勉強になるかしら……と見始めたら、登場人物がみんな英語を話すのでズッコケたのを覚えています。インターネットで検索すると違和感を持った人は少なくないようです。やっぱりそうだよねえ、あの西太后が英語を話しているんだもの。まあ「ベンハー」では古代ローマ人が英語を話し、「アントニーとクレオパトラ」では古代エジプト人が英語を話し、「サウンド・オブ・ミュージック」ではオーストリアの家族が英語を話すんだもの。映画の世界ではみんな英語が話せるというわけですね。

今回は映画の主人公、愛新覚羅溥儀のことを少し勉強してから鑑賞しました。なので、私のような素人が見ても史実と異なる点が多数あることに気付きました。結構大胆な創作も盛り込まれていて、溥儀本人が見たらどう思っただろうと感じてしまうシーンもありました。

作品の上映時間は2時間43分と十分長いのですが、1人の人間の一生を見せるには短すぎます。幼少期のうちは「外の世界を見てみたいんだな」などと読み取ることができます。けれど家庭教師のジョンストンが登場したくらいの青年期以降は溥儀のキャラクターが安定しません。皇帝という地位に執着する権力者なのか、それとも皇帝なんてどうでもいいから自由になりたいアウトローなのか。もちろん溥儀本人にはいろんな思いがあるわけですが、それが描き切れていないのです。ある程度、史実を知ってから見るならいいのですが、初めて見た人は溥儀という人物が掴みづらかったり、展開が早いと感じたりするのではないかと思いました。

溥儀だけではありません。坂本龍一さんが扮する甘粕正彦もあれよあれよという間に自殺しちゃって「結局何者?」という感想だけが残ってしまいます。パイロット風の(ちょっと胡散臭い)女性の登場(※川島芳子のこと)も突然すぎて、しばらく「え、アンタ誰?」ってなっちゃいました。あとは文化大革命のシーンで政治犯収容所の所長が紅衛兵につるし上げられた際、溥儀が「この人は良い人なんだよ」とかばうのも「え、そんなに親密な仲だったっけ?」と視聴者が置いてけぼりになります。もちろん、そうなるに至った背景を想像はするんですが、描かれ方が薄いんですよね。

ああだこうだと言ってしまいましたが、映像美は見事でした。作中に登場する紫禁城の情景は圧巻ですし、場内で生活する人々の衣装は豪華でした。中国政府の全面協力のもと、1日に5万人が訪れるという紫禁城を数週間借り切って撮影が行われたよし。CGでない撮影はいつまで経っても古さを感じさせない壮大さがあります。