日本で最後に髪を切ってから1か月半ほどが経ち、そろそろ切らねばと思い立って美容室に行った。
ただでさえ引っ越し先で初めての美容室を見つけるのは難しいのに、ましてや海外だ。思い出すと学生時代の北京留学も、しばらく行きつけの美容室を決められずに髪伸ばし放題だった。
私の髪の毛は太くて、しかも量が多い。いわゆる剛毛ってやつ。加えて上向きに生えているので、伸びてくると「ぼわっ」とした感じになるのだ。それが嫌で、ハードジェルといった整髪料で「ぼわっ」とならないように抑えつけている。すると「短くすればいいじゃないの」と言われるのだが、これまた髪の毛が元気良いので、角刈りと言うのか、スポーツ刈りと言うのか、とにかくあんな感じになってしまう。人民服を着れば、北朝鮮のニュースに出てきそうな男性の出来上がりだ。スタイリストさんの技術次第で結構な差が出るため、引っ越し後に行きつけの美容室を見つけるまで本当によく悩むのだ。
とは言え、そろそろ切らないと仕事にも支障が出る。
日本人がいるというサロンに電話をして予約しようとすると「今日は予約が全て埋まっていて、中国人スタイリストのみになります」と言う。うーむ、出鼻をくじかれた。けれど次の週末まで待ってはいられない。日本人スタイリストの店にいるなら日本人の髪も切り慣れているだろうと思い、中国人スタイリストの方にお願いすることにした。
いざ店舗に行くと、店員は思った以上に中国人が多い。というより日本人スタイリストが1人いるだけで、おそらく他は中国人だったんじゃないかな。それもみんな日本語が話せないようだ。リーダーみたいな女性が1人いて、日本語の通訳を担っていた。
いざ椅子に座ると、女性が中国人スタイリストの耳元で何かぼそぼそと話している。おそらく「この方は中国語が話せるから要望は直接聞いて」といったことを話していたのだろう。スタイリストさんが正面を向いて、中国語で「どうしますか」と聞いてきた。
人によっては有名人の写真を見せて「こんなふうに切ってください」と言う人もいるのだろうが、私の髪の質じゃ逆立ちしても実現できないのは百も承知なので、そういうことはしない。「大体1か月分くらい切ってほしい、私は比較的髪の伸びる速度は速いほう、刈り上げてもいいけど刈り上げすぎないで、髪の量が多いので多めにすいてほしい」みたいなことを伝えると、スタイリストさんは承知しましたと頷いてくれた。
途中で「もっとすいてほしい」という意味で「長さはこのくらいでいいので、量をもっと少なくして下さい」と伝えたら“更薄一点?”(もっと薄くしますか?)と聞いてきてくれた。中国語で髪をすいて量を少なくすることを「薄くする」と言うようだ。なるほど~。けど「髪の毛を薄くしてください」って、ちょっぴり嫌な響きだ(笑)。
あまり短くはしなかったが、要望通り多めにすいてくれたので頭が結構軽くなった。とりあえずは成功といったところか。これで230元(約4700円)、まあこんなもんだろう。
髪を切り終わってからショッピングモール「ジョイシティ」(“朝阳大悦城”)にあるイオンに行ったら、食品売り場がすっからかんだ。まだ時間は18時前だったので閉店時間には早い。そして“出清”と書いたチラシが至る所に掲げられている。セールと書いてはいるものの、“出清”は在庫処分といった意味だ。どういうことなのだろう。
冷蔵庫もこの通りだ。商品の入れ替え?いや、それにしては規模が大きすぎる。不思議に思い、公式サイトを見てみた。
果たして閉店の案内があった。明日が最終営業日らしい。
ここのイオンは11年前に私が留学していた頃にもお世話になった店。今回の北京赴任で再訪し「まだやっているんだ」と嬉しく思ったのも束の間だ。けれど再訪できただけ良かったのかなあ。
おそらくここのイオンも中国のネット通販の潮流に苦しんだのだろう。こうして日本の誇るスーパーがまた1つ少なくなった。北京にイオンはもう2店舗あるものの、留学時代にもお世話になった店が無くなるのはやはり寂しいなあ。