北京で有名な日系スーパーはイオンのほかにもうひとつ、イトーヨーカドーがある。
11年前の留学時代に、西直門にあったイトーヨーカドーには行ったことがある。確か”华堂商场“(華堂商場)という名前で、日系スーパーだからいろいろ日本の商品が手に入るかと期待して行ったが、実際のところは「ほぼ現地のスーパー」だったのを覚えている。
西直門にあった「華堂商場」(2010年9月撮影)
この西直門店は2014年に閉店したらしい。日本のスーパーが受け入れられなかったというわけではなく、ネット通販の普及で苦しい闘いを強いられていたようだ。今や北京にイトーヨーカドーは1店舗を残すのみとなり、どんなものか気になり訪れてみた。
やって来たのはイトーヨーカドー亜運村店。
イトーヨーカドーは中国で2つの名称を使い分けている。ひとつは西直門店などが採用していた”华堂商场“(華堂商場)で、イトーヨーカドーの「カドー」(華堂)の文字を含みつつ、ぱっと見、中国発祥スーパーのようだ。もうひとつは”伊藤洋华堂“(伊藤洋華堂)そのままで、ひと目で日系スーパーだと分かる名称だ。こちらは四川省・成都で展開する店舗が採用している。
合弁相手が違うから、と聞いたことがあるが本当にそうなのだろうか。ふと思ったのは、日系スーパーだと目立ちたくないときは”华堂商场“(華堂商場)を使い、日系スーパーであることを全面的に出したいときに”伊藤洋华堂“(伊藤洋華堂)を使うのかなあ、とも思ったのだけれど。
北京に唯一残ったこの店舗は”伊藤洋华堂“(伊藤洋華堂)だ。
店舗の規模は日本のイトーヨーカドーと同じくらい。
入り口で”九州节“(九州祭り)と題して、九州の物産を販売するフェアを実施していた。現場責任者と思わしき日本人が中国人スタッフに指示しているのを見たので、店舗の運営には日本人も関わっているようだ。
地下の食品売り場に行ってみた。規模が大きくて品揃えが良い。清潔感もあって購買欲もそそる。
中国のスーパーは魚売り場がすごい。日本だと切り身がパックで売られていることがほとんどだが、こちらはドーン!と魚がまるまる並んでいる。それも日本ではあまり見たことのない種類が多い。この写真の黄色がかった魚は”黄花鱼“と書いてある。日本語では「キグチ」と言うらしい。
こちらは”大带鱼“(タチウオ)、北京のスーパーでは比較的よく目にする魚だ。長さが1メートルはありそうで、それが何匹も並ぶ様子は壮観。
他にもこうして水槽に入った魚が何匹も。
それぞれ水槽に名前が貼られていて、右上が”鲟鱼“(チョウザメ)、右下が”草鱼“(ソウギョ)、真ん中の上段は”河鲈鱼“(ヨーロピアンパーチ)などと書いてあるが、正直よく分からない(笑)。食材を見ているというより、水族館で魚を眺めているような気分だ。
私が一番驚いたのは日本の商品の品揃えだ。先日イオンにも行ったが、イトーヨーカドーの品数はその比ではない。日本から直輸入した商品から現地で生産しているであろう商品まで、何でもあった。
うどん県のマークが付いた「讃岐ぶっかけうどんだし」!確か新橋の香川県のアンテナショップで見たことがある。日本の普通のスーパーだって売っていないよ(^^;)。しかしお値段は59元(約1200円)とだいぶお高め。日本での価格を調べてみると、概ね270円といったところのようだ。
弁当やサンドイッチといった出来合いの商品も多数並んでいた。中華もあれば”日式便当“(和風弁当)もあって、どれもおいしそう。価格も10~20元台(約200円~400円台)が多くてお手頃だ。
日本の食材や調味料が必要になったときは、とにかくイトーヨーカドーに来れば全く問題なさそうだ。実際、食品売り場では何人もの日本人とすれ違った。みんなここを頼りにしているんだなあ。
1階には”顾客之声“(お客様の声)という掲示板があった。これも日本らしい。
「店内のケータイ電波が悪い」とか「レストラン街に刀削麺の店を増やしてほしい」などといった意見・要望が書かれていて、店長がひとりひとりに丁寧に回答していた。
今は日々の食材だってインターネットで購入するのが中国。イトーヨーカドーはそんな北京で生き残っていくために「日本の商品」をどこよりも充実させることで他と差別化を図ったんじゃないかしらん。だから店名だって、これまで使っていた”华堂商场“(華堂商場)という地元発祥なのか日系なのか分かりくいものから”伊藤洋华堂“(伊藤洋華堂)という日本名に変え、日本ブランドで闘っていこうとしているんじゃないかなあと。
今日は国慶節の連休最終日だったが、多くの人で賑わっていた。とりあえず、うまくいっているということかな。少なくとも私は今後もお世話になることが多そうだ(^^)。