今、誰もが文章を書きたがっています。ブログこそSNSの勢いに押されて最近は下火になっていますが、noteといったサービスの台頭で一般の人が気軽に文章を発表し、金銭さえも得ることができるようになりました。

私は文章を書くのが好きです。ブログを書くのも苦ではありません。このブログは趣味なので、これで稼ごうとは毛頭も思っていないですけど。ただ、どれだけ書いても自分の文章には自信が持てないですね。ブログにしても書いては消してを繰り返し、いざ公開してからも幾度と修正しています。

そんな私も小さい頃「小説家」になりたいと思っている時期がありました。小学3、4年生の頃だったでしょうか。というのが当時、江戸川乱歩の小説「少年探偵団」シリーズに夢中だったのです。シリーズ全巻を読みふけり、「江戸川乱歩」もどきの小説を創作しちゃうような小学生でした。

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江戸川乱歩といえば言わずとしれた推理小説の大家。「少年探偵団」シリーズは乱歩が少年・少女向けに書いた作品です。名探偵・明智小五郎と、その弟子・小林少年、そして小林少年を団長とする「少年探偵団」が様々な事件を解決していく活躍ぶりを描いています。作品の多くには怪人二十面相という大怪盗が登場し、探偵たちと繰り広げる推理対決が特に印象に残っています。

この「少年探偵団」シリーズが初めて世に出たのは1936年発表の「怪人二十面相」、もう今から90年近く前なんですね。小学生の頃に読みましたが、数年前にどうしても読み返したくなり、新装版を買って読みました。

改めて読むと、驚くほど「時代を感じる文体」です。さらに最近の小説ではあまり見かけない「です・ます調」。この独特の文体こそが「少年探偵団」の魅力であり、ページをめくる毎に昭和初期にタイムスリップさせてくれます。

それにしても、待たれるのは、長男壮一君の帰宅でした。徒手空拳、南洋の島へおしわたって、今日の成功をおさめたほどの快男児ですから、この人さえ帰ってくれたら、家内のものは、どんなに心じょうぶだかしれません。

読者諸君はよもやおわすれではありますまい。この少年こそ、いつか自宅の庭園にわなをしかけて、二十面相を手ひどい目にあわせた、あの大実業家羽柴壮太郎氏のむすこさんです。

急に読者に話を振ってくるような書き方も「少年探偵団」シリーズの特徴でした。あとは少年・少女向けとはいえ、難しい言葉をたくさん使っているのも印象的です。「神変不可思議」とか「徒手空拳」みたいな漢字ばかりの言葉を始め、「鵜の毛ほどの油断」といった慣用句も出てきました。

大学生の頃に友人から「おまえの書いたり話したりする日本語はどうしてこうも『古めかしい』んだ」と言われたことを覚えています。今思うと乱歩の影響だったんじゃないかしらん。いずれにせよ私の言語形成に大きな影響を与えてくれたことは事実です。

「少年探偵団」シリーズのもうひとつの特徴は装丁です。この表紙の昭和感溢れる絵が好きでねえ……マニアックですが、私は「大金塊」の表紙が好きでした。作中の挿絵もおそらく同じ方が手がけていたと思います。そうだ、確か挿絵には「Shigeru」とサインがありました。これを手がかりに調べてみると、果たして柳瀬茂さんとおっしゃる方が描いたそうです。小学生の頃の私は、江戸川乱歩風の文章をまねるだけでなく挿絵もまねていましたね。それほど好きだったんです(^^;)。

ああ、ここまで書いていたら再び読みたくなってしまいました。中国では手に入らないですが、電子書籍(Kindle)にもあるとのこと!……けど、やはり「少年探偵団」シリーズは、この装丁で読みたいなあ。小学生の頃、もらったばかりの小遣いを握りしめて買っていた乱歩の書籍はまだ実家にあるのかしら。日本に帰国した折には是非大人買いをしたいですね。