私が十数年前に北京に留学していた頃、中国の酒席で乾杯に使う酒と言えば「白酒」(パイチュー)でした。蒸留酒の一種で、アルコール度数が40~60度ほどある酒です。ツーンとした独特な香りが特徴で、これを小さいグラスに注いで「乾杯」のかけ声と共に一気に飲み干すのが定番です。ウォッカみたいな感じですね。
私は学生時代から専らビール党だったので、正直これは辛かったです。本当、どの飲み会に行っても白酒。特に北京だと「二鍋頭」(“二锅头”)という白酒が多かったですが、これが飲み慣れなくて、飲み相手がトイレに行っている間にこっそり捨てたこともありました(ごめんなさい)。最近は仕事の付き合いで中国の方と飲むことも増え、白酒にも慣れてきましたけど。
で本題なんですが、今日こんなものを飲みました。白酒味のするラテ。今年9月に中国で発売されるやいなや話題になった商品です。
カップに書いてある“酱香拿铁”という商品名、“酱香”は白酒の独特な香りを指す言葉です。“拿铁”はラテという意味ですから(「ナーティエ」と発音します)、これで「白酒味(白酒の香り)がするラテ」という意味になります。中国の高級白酒「貴州茅台酒」が大手コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」とコラボレーションした商品です。
一時売り切れになるほどの人気が出ましたが、私は正直全く欲しいと思いませんでした(笑)。コーヒーとバナナとか、抹茶とミルクとか、相性が良さそうならいいですけど、コーヒーと白酒は明らかに「不釣り合い」。昔、キュウリ味のペプシコーラが発売されて話題になりましたが、あれと同じでひとときの話題作りだろうという程度にしか受け止めていませんでした。
おそらく今後も飲むことはないだろうと思っていた「白酒味のラテ」。恐る恐る口にすると……んん?まあまあイケます。白酒と知って飲むから構えてしまいますが、何も知らないで飲んだらフルーティーな味のするラテとしか思わないかもしれません。原材料のミルクに高級白酒の「茅台酒」が混ぜられていて、アルコール度数は0.5%以下に抑えてあるそうです。
金には困っていないであろう国有企業の「貴州茅台酒」がこうした商品を開発した背景には、中国でも白酒を飲む若者が少なくなっているという現状があるようです。今やビールやカクテルといった「白酒以外の酒」は何でもありますからね。去年にも茅台酒入りのアイスクリームを販売して話題になっていましたが、白酒メーカーなりに若者の関心を引こうと頑張ったんだと思います。
販売から2か月が経ち、発売当初の盛り上がりは見られなくなったかなというところですが*1、これが今後若者の飲酒トレンドにどう影響を与えるのか注目してみたいと思います。
*1 | 熱しやすく冷めやすい、この国の人たちならではという感じですが。 |
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