The time is gone, the song is over, thought I'd something more to say.

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本当に「そんな中国語は使わない」のか

ツイッターを見ていると「教科書のウソ」と称して「こんな中国語は見たことがない」と紹介するツイートが流れてきた。

このツイートが言っているのは「“便宜一点儿”(安くしてください)なんて中国語、日常では使わない」ということなんだろうけど、こういう中国語ネイティブでもない日本人が「そんな中国語を使う人を見たことがない」とか、ましてや「教科書のウソ」とまで断じてしまう拙速な主張を目にする度にため息が出る。

自分もノンネイティブであることを棚上げして言わせてもらえば“便宜一点儿”(安くしてください)という表現は今でも日常的に使うし、耳にする。例えば、中国版メルカリの“闲鱼”を見てみると“可以再便宜一点吗?”(もうちょっと安くなりませんか)というやり取りをそこら中で目にする。

「都心部でほぼ見かけたことがない」というのは、あくまで都市部で「値切る」場面が少なくなっているだけだろう。例えばスーパーで「安くしてください」なんて、今や中国でも普通は言わない。でも、それは「安くしてください」という中国語を使わなくなっているかどうかとは別問題だ。それに、ツイートで代わりに紹介されている“有优惠吗?”という表現も、本来は「(キャンペーンなど)優遇はありますか?」という意味。売る側がその場で決めた値下げも含まれるかもしれないが「安くしてください」というニュアンスとは少々異なる。

ちなみに今回に限らず、ネイティブの中国人にも「そんな中国語は使いません」「そんなふうには言わない」と勇ましく主張する人はよくいる。中国は国土が広いので、ひと言に「中国語」と言っても地域で差が大きく、質問して返ってくる答えは千差万別なのだ。複数のネイティブに中国語に関する質問をすると、出身地によって「Aが正しい」「いや、違う、Bのほうが正しい」みたいなことになり、そのうちネイティブ同士で言い合い始めて、私の方が置いてけぼりになることもままある。しかしそれはどちらが正しいとかいう問題ではなく、往々にして地域による差に過ぎないのだ*1

私たちの何十倍も「中国語」に接しているネイティブでさえこんな感じで、それほど言語とは多様で複雑。それをノンネイティブがいとも簡単に否定してしまうことが、いかに拙速かは想像がつく。

まあ気持ちは分かるけどね、言うなら「そういう中国語を使う人もいるかもしれないけど、私は使わない」くらいかな。言語にはとにかく謙虚さが大切だと思う。

References
*1私は中国語に関する質問をするときは、基本的に北方の出身者に聞くようにしている(もちろん南方の中国語を否定しているわけではなく、自分の軸を北方に置いておきたいという意味で)。

日本語と韓国語の共通性

お昼に仕事で付き合いのある韓国の方と食事をご一緒する。この方が韓国に帰国されることが決まり、後任の方を紹介してくれたのだ。例によって我々がやり取りする言語は中国語。日本語でなければ韓国語でもない。思えば、中国語が母語でない者同士が中国語で会話するとは興味深い体験だ。

興味深かったのが、韓国の方が“休职”という言葉を使ったことだ。読んで字の如く「休職」と言いたいのだろう。しかし辞書を引くと分かるが、中国語に“休职”(休職)という言葉はない。いや「ない」ことはないかもしれない。耳で聞けば「職を休むのだな」ということは中国人にも分かるだろう。しかし意味としては、悪いことをして「休まされる」といったニュアンスに感じる人が多いんじゃないかな。日本語でいうところの「停職」といった感じ。

そういう意味では、日本語の「休職」は別に悪いことをした場合に限らないし、むしろ権利として職を休むことを指す。

きゅうしょく【休職】
公務員や会社員がその身分・資格を保ったまま一定期間職務を休むこと。

明鏡国語辞典(大修館書店)

ちなみに韓国語では「休職」のことを“휴직”(ヒュージッ)と言う。漢字で書くと「休職」だ。意味は日本語と全く同じで、おそらく今日ご一緒した韓国の方は韓国語の「休職」をそのまま中国語で発音して“休职”と言ったのだろう。日本語と韓国語の「休職」は、正しくは中国語で“停薪留职”と言う。意味としては「給料を停止し職を留める」。ちょーっと、まどろっこしい。

漢字語を見ると、日本語と韓国語には共通した語彙が多い一方、中国語は独特なものが多い。

例えば「作動」という漢字語。韓国語でも“작동”(作動)と言い、日本語で「作動する」と言う場面はほぼそれで置き換えられる。

  • 機械が作動する=기계가 작동하다/キゲ(械)ガ チャックドン(作動)ハダ
  • 防犯カメラ作動中=방범카메라 작동중/バンボム(防犯)カメラ チャックドンジュン(作動中
  • 誤作動오작동/オーチャックドン(誤作動

中国語には「作動」という言葉がない。直接漢字で“作动”と言っても通じず、それぞれのパターンで言い換える必要がある。

  • 機械が作動する=机器启动了(機器が起動した)
  • 防犯カメラ作動中=您已进入监控范围(あなたは監視エリアにいます)
  • 誤作動=失误(ミス)、错误操作(操作ミス)、误动作(誤動作)

つまり日本人と韓国人が中国語で会話しようとするとお互いの言語にはそれぞれ共通の語彙が存在するのに、中国語では訳し分ける必要があるのだ。この点、日本人と韓国人が中国語で会話しているのに、中国人だけ「ん?どういう意味?」となったら面白いだろうなあ。

シャンシャン中国へ

今日、上野動物園で生まれ育ったジャイアントパンダの「シャンシャン」が中国に返還された。朝から日本での報道ぶりはすごいし、何なら中国での関心も高い。シャンシャンが大勢のファンが見送れながら上野動物園を出発する様子が伝えられると、中国版ツイッター「ウェイボー」では“日本人有多舍不得中国大熊猫香香”(日本人がどれほど中国ジャイアントパンダ、シャンシャンとの別れを惜しんでいるか)というハッシュタグが出回ったほど。

「ウェイボー」には「日本の皆さん、これまでシャンシャンを愛してくれてありがとう」と感謝する言葉や「シャンシャンは中国語を理解できるのかな」なんて投稿も。中国政府が相手国との「友好」のシンボルとしてパンダを貸し出すやり方は「パンダ外交」なんて言われているけど、日本と中国の友好促進に繋がっているのはあながち間違いでもなさそう。

ちなみに「シャンシャン」で思い出すのは、中国外務省記者会見での騒動。まあ、騒動というほどのものではない、ほほえましいハプニングだけど。

2017年12月の中国外務省の記者会見での出来事。日本人記者が当時上野動物園で「シャンシャン」が一般公開されたことについて質問したところ、華春瑩報道官が厳しい表情で回答。

我们希望日方与中方能够相向而行,按照中日之间的四点原则共识和四个联合的文件,来妥善处理好有关的问题。

我々は日本側が中国と向かい合い、両国間の4点の共通認識と4つの共同文書に則って関連する問題を適切に処理することを望みます。

あまりに的外れ(?)な回答に会場は一瞬シーンと凍り付く。すると別の中国人記者が「ジャイアントパンダのシャンシャンのことですけど」と聞くと、華報道官は「あ、そのシャンシャンのこと?私はてっきり……」と我慢できずに笑顔がこぼれていた。

原因は華報道官がシャンシャンを当時の外務省の杉山外務次官と勘違いしたため。中国語発音では「杉山」を[Shānshān](シャンシャン)と発音する。実際の中国語では、シャンシャン(香香)を[Xiāngxiang](シアンシアン)と発音し「杉山」とは少々異なるので、中国人が質問していれば聞き間違えなかったかもしれない。

成熟

そう言えば、日曜日に行ったマッサージ屋で夫婦揃ってマッサージ師から「あんたたち、まだ若いでしょ」と言われた。私が「何歳に見える?」と聞くと実年齢より10歳くらい若い年齢を言うので(お世辞かどうかは別として)妻とニヤニヤしてしまった。

私は昔から年齢よりも若く見られることが多い。就職してからもスーパーで酒を買おうとして年齢確認されることがあった。若かった頃は「ずいぶん下に見られているんだな」と良い気分がしなかったが、今となっては悪い気がしない*1。これが中国になると、余計に若く見えるようだ。確かに私から見ても、同年代の中国人にはずいぶんと老成した方々が多いように感じる。

中国では「それなりの年齢」になると“成熟”が求められると言う。人格が完成し、人としての深みや厚みがある状態のことだ。日本語でも「成熟」と言うが、どちらかというと「身体面」を指すことが多い気がする。中国語はそれよりもっと精神的な部分を指して“成熟”と言う。もしかすると、人間の顔つきとはそうした“成熟”によるものが大きいのかなあ。そういう意味では、私はまだまだ“不成熟”ということなのかもしれない(^^;)。

References
*1……と思う時点で、ああ、自分は年を取ったんだなと感じるけど(^^;)。

流浪气球

ここ数日、ニュースを賑わせているアメリカによる中国の気球撃墜。今日、共産党系メディアとして知られる『環球時報』を見ると、おもしろい見出しだった。

中方抗议美击落“流浪气球”(中国はアメリカによる「さまよえる気球」撃墜に抗議した)

環球時報(2月6日付)より

おもしろいのは気球を“流浪气球”(さまよえる気球)と表現している点。

これを見てピンときた方は中国のエンターテインメントに通じている方だろう。中国で2019年に大ヒットした映画のタイトル《流浪地球》(邦題『流転の地球』)をもじったんだなあ。

流浪”というのは日本語の「流浪」と同じで「さまよう」という意味がある。だから日本語タイトルも『流転の地球』より『流浪の地球』や『さまよえる地球』のほうがよかった(分かりやすかった)んじゃないかと個人的には思っている。

この《流浪地球》、私も見た。ちょうど2019年に北京に出張する機会があり、仕事が終わってから映画館に見に行ったのだ。中国のSF特撮技術がハリウッドに追いついた!だったか、ずいぶん大げさな宣伝だったのを覚えている。とはいえカメラワークが理由か、何だかゲーム画面を見ているようだった。あとこれは「中国あるある」だが、内容がてんこ盛りで展開が早すぎて着いていけない。親子の愛みたいな「お涙頂戴」のシーンも全然共感できないし、プロパガンダなのか、ところどころで「中国!」を主張しすぎて一気に冷めてしまう。

とまあつらつらとコメントしたが、要するに私個人はそこまでの出来に感じなかった。そんな数年前の映画タイトルをなぜ今更もじるかというと、ちょうど今《流浪地球2》が公開中なのだ。ちょうど春節の連休前に公開され、私の周りでも「見た」という中国人が結構いる。

正直あんまり期待していないが、まあせっかく中国にいるんだし見に行ってもいいかも。

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