今日、北京にある少し大きめの病院に行ってきました。

入口近くの公道から病院の建物を1枚だけ写真に撮ったところ、後ろから「写真を撮るな」と言われました。おそらく病院の関係者でしょう、私は「はいはい」とだけ返事しておきましたが、この感覚、何だか久しぶりだなと感じました。

病院は公共施設です。日本の場合、公道から建物を撮るだけなら問題にならないと思います。敷地内で許可無く撮影をしたり、誰かが写り込んだりしたら注意されるでしょうけど。しかし中国は公道であろうが敷地内であろうが、怒られちゃいます。

確かに中国、特に北京で辺り構わず写真撮影するのは御法度だし、危険です。中国には政府施設や軍事施設といった、明確に写真撮影が禁止されている場所があり、勝手に写真撮影をすると最悪身柄を拘束される場合もあります。

けれど、それは「敏感な場所」に限った話。ショッピングモールといった何でもない場所は別です。中国の人たちだって、みーんな思い思い写真を撮影しています。おそらくTikTokなんかに投稿するためなんでしょうけど、満足がいくまで何度も自撮りをしていて「そこまで自分が好きなのか」と言いたくなる場面に出くわすことも。

今日の私は単に病院の建物を撮っただけで怒られてしまったわけですが……何だか、むかーし読んだ本のことを思い出しました。

http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN4-7684-6881-0.htm

お茶の水女子大学の元教授で、NHK「中国語会話」で講師役も務めた相原茂氏の「北京のスターバックスで怒られた話」、中国語にまつわるたくさんの面白いエピソードを集めたエッセー集です。この本が出版された2004年当時、私は中学生でした。ちょうど中国語を学び始めて間もない頃で、夢中で読んだことを覚えています。持っていた相原氏のエッセー集はこれだけではありません。

タイトルにもある「北京のスターバックスで怒られた話」というのは、相原氏が北京のスタバで写真撮影をしようとしたら店員に怒られたという、自身のエピソードです。

残念ながら本を日本に置いてきてしまったので記憶に頼るしかないのですが、写真撮影を咎める理由について「自分の権利を主張する中国の文化によるもの」と説明していたように覚えています。中国人は「自分エリアなかは力を行使し、顕示しようとする」傾向が強い。つまり、行為そのものが禁止されているからというより「私がダメと言っているからダメなのだ」と自分の権力を行使したがる人が多いからだと指摘しているわけですね。

でも、何となく分かります。例えば中国の地下鉄やバスの車内で見かける「乗務管理員」というスタッフ。車内の治安・秩序を守ることを目的にいるわけですが、よく高圧的な人を見かけます。新型コロナウイルスの感染がまだ深刻だった頃は、あごマスクの人物を見つけると「マスクをきちんとつけろ!」と大声で叫ぶんですね。最近はあまり言わなくなりましたけど。

あとは「保安」。肩や胸に「保安」と書かれたワッペンを付けていて、警察官みたいな制服を着ています。ふと「警察官なのかな?」と思っちゃうのですが、いえ、違います。中国の「保安」は単に警備員みたいな立場の人で、警察官のように法律を執行することはできません。なのに「力を行使したがる」からなのか、高圧的に「パスポートを見せろ」「記録用に写真に撮る」とか、そういうことを言いがちです。私も一度そういう経験があり、その際は「何の権利があって私のパスポートの写真を撮るのか」と反論しましたけど。だって、何に悪用されるか分かったもんじゃありません。

まあ、日本にもたまーにいますけどね。自分に与えられた役割をもって「自分が偉くなった」と勘違いしちゃう人。でも今日、私に「写真を撮るな」と言った人は怖かったです。中国のほうが少し深刻かも知れません。