昨日、3月20日は地下鉄サリン事件の発生から30年。ここ数日、テレビや新聞では連日事件を振り返る特集を扱っていました。
当時、私は6歳でした。ワイドショーではオウム真理教をめぐるセンセーショナルな映像を連日放送していました。最たる例が、1990年に教団の幹部が衆院選に立候補したニュース。白いユニホームの信者たちが宣伝カーに乗ってマーチを流し続ける様子は全国の子どもたちに強い印象を残しました。しょーこ、しょーこ♪とマーチを口ずさんで叱られたことがあるのは私だけではないはずです。
当時は物事の分別がつかなかった私も、成長するにつれていかに事件が未曾有の出来事だったかを知るようになります。中学時代、私は父親の仕事の関係で東京に引っ越しましたが、初めて地下鉄・霞が関駅を訪れた際に「ここが事件の起きた駅か」と思ったことをよく覚えています。
一方、最近の報道によると若者の間では地下鉄サリン事件を知らないという人が増えているんだそうです。近年、教団の後継団体は新規の構成員の7割以上を20代と30代の若者が占めていて、公安調査庁は「事件を知らない若者が勧誘されている」と警鐘を鳴らしています。
今朝の朝日新聞に江川紹子さんのインタビューが掲載されていました。江川さんといえば、言わずとしれた教団を長く取材してきたジャーナリストの1人。この中で江川さんは「社会そのものが『カルト性』を帯び始めている」と指摘しています。
江川さんは「自分たちが絶対に正しく、批判する者を悪だとする考え方や、思うようにいかないと、自分たちを被害者だと主張し、陰謀論に走る姿勢。こうした特徴が、社会全体に見え始めている」とする。
人々はなぜ、時に善悪二元論に陥り、陰謀論にはまるのか。江川さんは今こそ、「カルト現象」とも言うべきこうした状況の背景を探るための研究や、カルトに絡め取られないための教育が必要だ、と訴える。念頭にあるのは、カルトの闇が、地下鉄サリン事件とは違う形で悲劇を生んだ安倍晋三元首相銃撃事件だ。「このままカルト対策をせず放置すれば、形を変えて、3度目の悲劇が起こりかねない」
根拠のない「陰謀論」が無責任に拡散され、社会をゆがめるSNS隆盛の時代。もし地下鉄サリン事件の起きた当時にSNSが存在していたなら……と、恐ろしいことを考えてしまいます。しかし江川さんのインタビューを読むに、今のほうがよっぽど事件の繰り返される可能性は高いのかもしれません。
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