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The time is gone, the song is over, thought I'd something more to say.

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体調の悪い一日

今日は日曜日だけれど朝から仕事。ただ、どうも体調が悪い。

会社の車で移動していて、私がコンコンと咳をするのを見た中国人ドライバーさんが「のどの調子が悪いのかい?」と聞いて来てくれた。「熱はないし、だるいこともないんだけど、のどの調子が悪くて咳が出る」と言うと「そりゃインフルエンザだ」と言う。

いやいや、今は仕事が重要な時期なんだから、そんな言い方はウソでもやめてよ~と言うと「ははは、とにかく水をたくさん飲むんだ」と教えてくれた。中国人は風邪らしい症状の人に対し、必ず“多喝水”(たくさん水を飲め)とアドバイスする。

ただ昼前くらいから体調がみるみる悪化。寒気がするし、どうもだるい。頭がボーッとしてきた。

いつも一緒に仕事をしている中国人スタッフに「体温計ってありますかね」と聞くと「いやあ、ないなあ」と言う。うーむ、少し前まで毎日のように体温を測らされていたというのに(笑)。でも、その後どこからか体温計を見つけてきてくれた。それも水銀の体温計。懐かしいなあ……と思いながら測定した結果は38.2度。うわあ、あまりよくない兆しだ。

夕方頃に早めに帰らせてもらい、帰宅後は薬を飲んですぐベッドで横になった。しっかり睡眠を取ればそんなにひどくはならないと思う。希望的観測。

 

ご本家に対する敬意

自宅近くにショッピングモールがあって、その中に「奈雪の茶」という店がある。中国各地で展開しているお茶ドリンク専門のチェーン店で、いつも若い客で賑わっている。

この「奈雪の茶」、そのネーミングといい、「NAYUKI」とローマ字まで振っているので日本のチェーン店かと思いきや、歴とした中国のチェーン店。店名にひらがなの「の」を使っていることもあり、日本発のチェーン店だと思い込んでいた(思い込んでいる)中国の人たちは多いと思う。

奈雪的茶--唯一官网
奈雪的茶所有门店均为直营,不接受加盟。一杯好茶,一口软欧包,在奈雪遇见两种美好。

それが、今日ショッピングモールで「奈雪の茶」の前を通りかかると看板が変わっていることに気付いた。「日本的要素」がすべて取っ払われていたのだ。

今までひらがなの「の」が使われていた部分は「的」に置き換えられ、「NAYUKI」とローマ字が振られていた部分は「NAIXUE」という中国語の発音表記に。

こうした「日本的要素」を取っ払う動きは他でも去年頃から相次いでいる。そのひとつが「ユニクロ」、「ダイソー」、そして「無印良品」のいいとこ取りをして大成功を収めた「メイソウ」。

2017年4月 上海にて撮影

初期はこんなふうにカタカナで「メイソウ」*1、それに日本漢字で「名創優品」と書いた看板を掲げ、悪い言い方をすると「日本ブランド」を騙っていた。それが去年ぐらいから中国のSNSで「日本風」であることに批判が相次ぎ、「もう日本風はしません」と謝罪・表明する事態に追い込まれたというわけ。

2022年10月 北京にて撮影

私が北京に赴任してから見かける店舗からは「メイソウ」というカタカナ表記は取っ払われているし、今まで日本漢字で「名創優品」だったのも、中国の漢字(簡体字)で“名创优品”と書かれるようになっている。つまり「日本的要素」を取っ払った結果がこれなのだろう。

おそらく「奈雪の茶」から「日本的要素」が取っ払われたのも同じ理由なんだと思う。でもねえ……ここまで散々「日本風」に媚びて儲けてきたのに、この開き直り。真似るなら真似るなりのプライドというか、ご本家に対する敬意みたいなものが全くないんだなあ。

ファーウェイの販売店(2022年10月撮影)

他にも「ファーウェイ」。この販売店のインテリアから、ひとつひとつの商品(例えばスマートウォッチの「HUAWEI WATCH」やワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds」)、そして新商品の発表会のスタイルまで、はっきり言ってすべて「Appleの真似っこ」。

いや、とはいえ世に数多あるAndroidのスマートフォンだって「iPhoneの真似っこ」から始まったものだし、そもそも世の中に全くのゼロから創造されるものなんてほとんどないのは分かっている。ただ……ちょっとでも「疚しい」と思っているならまだしも、この人たちは全く思っていないんだろうなあと(笑)。ここまで模倣し倒していると、いっそ清々しく思えてくるくらい。

確かに中国は発展したけれど、こういうところを見るにつけ「果たしてプライドがあるんだか、ないんだか、この人たちは」という気分になってしまう。ただひとつ思うのは、ご本家・模倣元に敬意の払えない社会ではイノベーションというものは起きないんじゃないかと……感じるところです、はい。

References
*1そもそも本当に日本ブランドなら「迷走」と連想しかねない「メイソウ」なんて名前を店舗名にはしないと思うけど(^^;)。

疼く春

最近、朝が全く寒くない。一時は最高気温でさえも氷点下だったけど、今日の最高気温は19度だった。土のにおい?っていうのか、春の香りを感じて「季節が変わったんだなあ」と実感する。

この時期になると毎年思い出す「感覚」がある。ものみな芽吹こうとして、うずうず・そわそわしている感覚だ。仕事においても生活においても春は新しいことを始める時期で、期待と不安が入り交じった何とも不安定な心持ちになる。むずむずするというか……別に花粉症じゃないんだけど。

作曲家の武満徹さんだったかなぁ、彼が生前にこんなことを言っていた。

「春は嫌いだ。どこか疼くような感じがして」。

ううむ、何だか分かるなあ。いや、嫌いとまではいかないけど「疼く」って感じ。だったら「ガガン」と暑い夏の日とか、「ドドン」と寒い冬の日のほうが好きですね。

みんなお友達

今日、昼に会社近くのセブンイレブンに行くと久しぶりに会う店員がいた。

このおばちゃん店員とは北京に来てすぐの頃によくやりとりをしていた。私がしょっちゅうコーヒーを買うので、たまに買わない日があると「今日はコーヒー買わないの?」なんて聞いてくれた。

北京でコーヒー好き認定
私はコーヒーが好きだ。おそらく人と比べても飲む量は少し多めかもしれない。特に仕事の合間はどうしてもコーヒーが欲しくなってしまう。東京にいた頃は毎朝自宅でコーヒーを淹れ、水筒に移して持って行っていた。それでも飲みきってしまうので、大概コンビニの100円コーヒーを買ってしまうことになる。先日も書いたが、北京のオフィス近所にはセブンイレブンがあってコーヒーを淹れてくれる。日本から送った荷物の中にコーヒーメーカーもあるのだが、あいにくまだ届いておらず、今は基本的に毎日セブンイレブンに行ってコーヒーを買う...

仕事ぶりもテキパキしていて、見ていて気持ちが良い。いつも会うのをひそかに楽しみにしていたが、ここ数か月ほど姿を見なくなっていたのだ。

今日、久しぶりの姿を見たので「長らく姿をお見かけしませんでしたね」と声をかけると「実家に帰っていたのよ」と言う。聞くと、実家には80代の高齢の母親がいるそうで、数年間帰省できない時期が続いていたらしい。このたび「ゼロコロナ」政策が終わってようやく感染対策が緩和されたため久しぶりに帰省したそうだ。「お母様はお変わりなかったですか」と聞くと「何てことないわよ」と話していた。

日本でコンビニの店員に気軽に話しかけるなんてあまりしないが、中国ではこういうことがままある。それもおじさんとかおばさんとか一定年齢以上の方とは特に。私はこういうのが本当に好きだ。

あとは道を尋ねられることも多い。なぜだろう、私が話しかけやすい顔をしているのだろうか。今日も午後11時前の遅い仕事帰り、自宅前で出前配達の若いお兄ちゃんに話しかけられた。こういうときは往々にして外国人と思われていないらしく「この配達先の住所って、このマンションのことでいいんですかね」と聞かれたので「はい、あのエレベーターに乗ればフロントまで行けますよ」などとお教えした。「助かりました」と笑顔で答えてくれると、こちらも気持ちが良い。

こういう「見知らぬ同士が気軽に声を掛け合う」って東京で暮らしているとかなりの勇気が必要だけど、異国ではなぜか簡単にできちゃう。そういうのもまた外国暮らしの楽しみかもしれない。

えらく違う

夜に仕事関係で日本人のお偉い方と食事。

ここ最近、基本的に仕事で付き合いがあるのは中国の人ばかりだったので、日本の人と会うと雰囲気がえらく違う。場所もちょっぴり雰囲気の良い和食料理店だったので、それがまた一層堅苦しくさせる。こういうやんごとなき方々もお酒が入ってくると打ち解けてくるものだが、今日の方は全くお酒を飲まない方で終始お堅い感じ。

テーブルにはおいしそうな料理がたくさん並んでいたけど、ガツガツ……という雰囲気でもなく、ああ、もったいなかったなあ。いや、仕事なんだけどね。言葉遣いも気にし出すと日本語って本当に難しい。中国人とやり取りしているほうがよっぽど楽だなあと感じた*1

References
*1もちろん中国語にも敬語表現はあるし、中国人が対人関係に敬意を払わないわけではないけれど。

北京で朝食を

今日は朝早い出勤。午前5時に起床し、6時前には家を出た。

朝イチで仕事があったからで、午前7時半頃には少し落ち着いたところ、先輩が「朝食の出前を取るけど、一緒に頼む?」と聞いて来てくれたので、私も便乗していただくことにした。

私はあまり朝食を食べない。もともとは「朝食を食べるくらいなら、もうしばらく寝ていたい」という何とも怠惰な理由だったが、そんな生活を続けていると、いざ朝食を食べた日にはお腹いっぱいになって昼になってもお腹が減らないのだ。会社勤めをしていると同僚とランチに出ることもあるし、削るなら朝食……?なんて思っちゃう。

けど、朝は朝にしか食べられないものがあるんだよねえ。特にアジアは中国に限らず、実に魅力的な選択肢がある。早朝から個人経営の小さな店や、あるいはチェーン展開の店まで、さまざまな朝食を提供している。出勤途中、会社近くの道ばたでトラックの荷台を調理台にして作っている“煎餅馃子*1なんておいしそうなにおいが漂っていて食欲をそそる。一方、日本は外で朝食を食べる文化がない。喫茶店のモーニングや松屋の朝食セットくらい?ましてや屋台なんて皆無。まあ警察や保健所の規制も厳しいんだろうけど、外国から来た旅行客や留学生は物足りないかもしれないなあ。

閑話休題。

今朝は中国の朝食の定番“小笼包*2と“豆腐脑*3をいただいた。“小笼包”は10個ほど入ったセットを先輩と半分に分けた。これと“豆腐脑”を1人1つ頼んで、計13元(約260円)。

いやあ、おいしい。北京をはじめ、中国北方の“豆腐脑”は豆腐の中にキクラゲ、シイタケ、ねぎなどの具が入っていて塩気がある。一方、中国の南に行くと黒蜜などをかける、甘い“豆腐脑”になる。甘い食事がそこまで好きでない私としては、北方の“豆腐脑”のが好き。

References
*1中国式クレープとも言うべき料理。
*2ショーロンポー。
*3おぼろ豆腐みたいなのに醤油味のあんがかかった食べ物。

中国の海底撈に行った

中国から日本に送りたいものがあり、郵便局に向かう。

大して混んでいたわけではないものの、私の前に並んでいた人たちがあれやこれや小包を送る人たちで、その割に作業をする郵便局員は2人しかいなかったのでえらく時間がかかった。

私のひとつ前に並んでいた人はビニール袋に大量に入れた服を持ってきていて、これを送りたいという。その場で局員が一着一着、服を畳んで段ボール箱に詰めていく。私からすると「そんなこと事前に家でしてきなさいよ。郵便局員は衣服を畳むのが仕事じゃないんだから」と思ってしまうが、中国では「それ」も局員の仕事なのだろう。あとから来る人たちも悉く「物品」のみを持ってきて、それを局員に段ボール箱に詰めさせるのだ。

郵便局員は決して要領が悪いわけではない。むしろテキパキしていて、作業に無駄がないといった感じだが、客がこんな感じなので私たちの順番まで結構待たされた。

いざ順番が来てからはあっという間だ。局員の女性は手際よく私たちが日本に出したいエアメール1通1通の重さを量り、差出人の欄などきちんと記入されているか確かめ、1通7元(約140円)だと教えてくれた。私はそれをスマートフォンの電子決済で支払いして終わり。なんと、このエアメールはたった140円で中国から日本へ旅できるんだなあ。

夜は西単にある「海底撈火鍋」に行った。日本で池袋の「海底撈」に行ったことがあるが、中国で来たのは初めてだ。いざ行くと待ち時間が1時間以上。ただ人気店なこともあって週末の「海底撈」で待ち時間が1、2時間なんてざらだと聞くし、とりあえず入ってみることにとした。

「海底撈」はそのアトラクション性というか、ホスピタリティの高さが有名で、待ち時間も退屈しないようにお菓子が用意してあったり、店員さんが「酸梅湯」*1を持ってきてくれたりとサービスが良い。しかし、確かに待ち時間は1時間余りかかり、正直待ちくたびれてしまった。

鍋は2つのスープが楽しめる“鸳鸯火锅”にした。ちなみに右側のスープは辛そうな「麻辣スープ」に見えるけど、実はトマトスープ。最初は物珍しいし食べていておいしかったけど、そのうち飽きてしまった。やはり中国の火鍋は「麻辣スープ」と「白湯スープ」だなあと反省。具材は羊肉をはじめ、娃娃菜やら、冬瓜やら、凍豆腐やら、豆苗やら、それに野菜やキノコ類をど〜んとアラカルトで頼む。タレはセルフサービスで取り放題なので、“芝麻酱*2の上に香菜、ねぎ、そしてにんにくのみじん切りとごま油をたっぷりかけていただいた。

いざ鍋をつついていると、そこらの卓から歌が聞こえてくる。どうやら誕生日の客がいると、店員が歌を歌ってお祝いしてくれるらしい。最初は微笑ましく見ていたが、これが後に店内のあらゆる場所で同時多発的に起きる。ほ、本当にみんな誕生日なの?大音量で歌が流れ、手拍子しながら「ウォー」なんて喜ぶ声も。2組目くらいまでは良かったけど、ちょっとそれ以降はやかましいと思うようになってしまった(おっと、失礼)。

味も悪くないし、いろんな食材があって楽しかったけど、ちょーっと私には騒がしかったかな。大学生くらいはこのノリがちょうどいいのかもしれないけど、私はもう少し静かに食事をいただきたい。初めてだったので良い経験にはなったけど、まあ、とりあえずしばらくは良いかな(笑)。

References
*1梅をはじめとする漢方で作られた、甘酸っぱい味がする薬剤ドリンク。
*2ゴマダレ。

スウェーデン料理

午後から北京は四元橋にあるイケアに行った。北京に来て間もない頃に西紅門にある郊外のイケアに行ったが、今回行ったのはそれと別にあるところ。

北京のイケア
ここ数週間かかえていた大きな仕事を終え、今日はお休みをもらった。朝はのんびり起床。普段なら罪悪感を感じる二度寝もひと仕事を終えた後だと正当化できて気持ちが良い。特にここ最近は朝が早かったり夜が遅かったりしたので、睡眠不足が一気に解消した。家が入居した時点から何も変わっていなかったため、いろいろと買いそろえようと午後から北京郊外にあるイケアに行った。向かったのは大興区西紅門にある“北京荟聚”というショッピングモール。ずいぶん大きなモールだったが、人は少なめかな。とは言え中心部から結構離れた郊外に...

四元橋のイケアは地下鉄やバスといった公共交通機関で行くには頗る不便な場所だ。まあ、日本でもイケアといえば自家用車で行かなければ不便な場所が多いか。家から15分ほどの距離だったので、タクシーで行くことにした。

週末だけあって激しい混みようだった。まずは昼食でも……とレストランに行ったら、これも席の取り合い。時間は午後2時を回っていたが、昼食を食べようという人でまだまだ賑わっていた。

私がいただいたのはイケアでおなじみ、ミートボール。妻はサーモンをいただき、2人揃ってスウェーデン料理の代表選手をいただいた。あまり詳しくなかったんだけど、スウェーデンのミートボールはマッシュポテトとコケモモ(リンゴンベリー)のジャムが付いてくるのが定番らしい。あまり甘い食事が好きではない私としてはコケモモのジャムに「うーん」と感じたが、ミートボール自体はおいしかった。マッシュポテトもおいしかったし、ビールがあったら進むだろうなという感じ。

肝心な買い物のほうは、あまりにも人が多くて物欲も失せるほどだったというか、回るだけで疲れてしまった。あれこれ買おうとは思っていたものの、何か思っていたのと少し違ったということもあり「わざわざ買わなくていいんじゃない?」なんて結論に至り、結局買ったのは小物数点。

本当に「そんな中国語は使わない」のか

ツイッターを見ていると「教科書のウソ」と称して「こんな中国語は見たことがない」と紹介するツイートが流れてきた。

このツイートが言っているのは「“便宜一点儿”(安くしてください)なんて中国語、日常では使わない」ということなんだろうけど、こういう中国語ネイティブでもない日本人が「そんな中国語を使う人を見たことがない」とか、ましてや「教科書のウソ」とまで断じてしまう拙速な主張を目にする度にため息が出る。

自分もノンネイティブであることを棚上げして言わせてもらえば“便宜一点儿”(安くしてください)という表現は今でも日常的に使うし、耳にする。例えば、中国版メルカリの“闲鱼”を見てみると“可以再便宜一点吗?”(もうちょっと安くなりませんか)というやり取りをそこら中で目にする。

「都心部でほぼ見かけたことがない」というのは、あくまで都市部で「値切る」場面が少なくなっているだけだろう。例えばスーパーで「安くしてください」なんて、今や中国でも普通は言わない。でも、それは「安くしてください」という中国語を使わなくなっているかどうかとは別問題だ。それに、ツイートで代わりに紹介されている“有优惠吗?”という表現も、本来は「(キャンペーンなど)優遇はありますか?」という意味。売る側がその場で決めた値下げも含まれるかもしれないが「安くしてください」というニュアンスとは少々異なる。

ちなみに今回に限らず、ネイティブの中国人にも「そんな中国語は使いません」「そんなふうには言わない」と勇ましく主張する人はよくいる。中国は国土が広いので、ひと言に「中国語」と言っても地域で差が大きく、質問して返ってくる答えは千差万別なのだ。複数のネイティブに中国語に関する質問をすると、出身地によって「Aが正しい」「いや、違う、Bのほうが正しい」みたいなことになり、そのうちネイティブ同士で言い合い始めて、私の方が置いてけぼりになることもままある。しかしそれはどちらが正しいとかいう問題ではなく、往々にして地域による差に過ぎないのだ*1

私たちの何十倍も「中国語」に接しているネイティブでさえこんな感じで、それほど言語とは多様で複雑。それをノンネイティブがいとも簡単に否定してしまうことが、いかに拙速かは想像がつく。

まあ気持ちは分かるけどね、言うなら「そういう中国語を使う人もいるかもしれないけど、私は使わない」くらいかな。言語にはとにかく謙虚さが大切だと思う。

References
*1私は中国語に関する質問をするときは、基本的に北方の出身者に聞くようにしている(もちろん南方の中国語を否定しているわけではなく、自分の軸を北方に置いておきたいという意味で)。

日本語と韓国語の共通性

お昼に仕事で付き合いのある韓国の方と食事をご一緒する。この方が韓国に帰国されることが決まり、後任の方を紹介してくれたのだ。例によって我々がやり取りする言語は中国語。日本語でなければ韓国語でもない。思えば、中国語が母語でない者同士が中国語で会話するとは興味深い体験だ。

興味深かったのが、韓国の方が“休职”という言葉を使ったことだ。読んで字の如く「休職」と言いたいのだろう。しかし辞書を引くと分かるが、中国語に“休职”(休職)という言葉はない。いや「ない」ことはないかもしれない。耳で聞けば「職を休むのだな」ということは中国人にも分かるだろう。しかし意味としては、悪いことをして「休まされる」といったニュアンスに感じる人が多いんじゃないかな。日本語でいうところの「停職」といった感じ。

そういう意味では、日本語の「休職」は別に悪いことをした場合に限らないし、むしろ権利として職を休むことを指す。

きゅうしょく【休職】
公務員や会社員がその身分・資格を保ったまま一定期間職務を休むこと。

明鏡国語辞典(大修館書店)

ちなみに韓国語では「休職」のことを“휴직”(ヒュージッ)と言う。漢字で書くと「休職」だ。意味は日本語と全く同じで、おそらく今日ご一緒した韓国の方は韓国語の「休職」をそのまま中国語で発音して“休职”と言ったのだろう。日本語と韓国語の「休職」は、正しくは中国語で“停薪留职”と言う。意味としては「給料を停止し職を留める」。ちょーっと、まどろっこしい。

漢字語を見ると、日本語と韓国語には共通した語彙が多い一方、中国語は独特なものが多い。

例えば「作動」という漢字語。韓国語でも“작동”(作動)と言い、日本語で「作動する」と言う場面はほぼそれで置き換えられる。

  • 機械が作動する=기계가 작동하다/キゲ(械)ガ チャックドン(作動)ハダ
  • 防犯カメラ作動中=방범카메라 작동중/バンボム(防犯)カメラ チャックドンジュン(作動中
  • 誤作動오작동/オーチャックドン(誤作動

中国語には「作動」という言葉がない。直接漢字で“作动”と言っても通じず、それぞれのパターンで言い換える必要がある。

  • 機械が作動する=机器启动了(機器が起動した)
  • 防犯カメラ作動中=您已进入监控范围(あなたは監視エリアにいます)
  • 誤作動=失误(ミス)、错误操作(操作ミス)、误动作(誤動作)

つまり日本人と韓国人が中国語で会話しようとするとお互いの言語にはそれぞれ共通の語彙が存在するのに、中国語では訳し分ける必要があるのだ。この点、日本人と韓国人が中国語で会話しているのに、中国人だけ「ん?どういう意味?」となったら面白いだろうなあ。

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