私の職場近くには中国有数の小児科病院があります。優秀な医師が揃っているそうで全国各地から患者が訪れるとのこと。いつも使っている職場の最寄り駅が病院に向かうバスの発着地点になっているので、出勤途中にはよく親子連れの姿を見かけます。

中には地方からやって来たと思わしき親子の姿も見かけます。お母さんは農作業に携わっているのか顔が真っ黒に日焼けし、首都・北京に来るためか子どもに目一杯おしゃれさせているのが分かります。治療代だって馬鹿にならないだろうに、藁にもすがる思いで北京まで来たのだろうか……と思うと心の底から応援したい気持ちになります。まあ、私の勝手な想像ですけど、実際そういう患者さんは多いようです。

ちなみにバスの発着地点の周辺には路上販売をする人もたくさんいます。おっちゃんおばちゃんが地面にシートを広げ、商品を並べているんです。何を売っているかというと、キーホルダーとか、ぬいぐるみとか、子ども向けのものばかり。そんなに高い値段ではないでしょうが、病院に向かう親子をターゲットにしているのは一目瞭然です。

私は最初この路上販売を見たときに良い気分がしなかったんですよね。患者の親子にたかっているように見えたんでしょうか。そもそも路上販売だって無許可でしょうから、がめついというか、嫌らしいと思ったのかもしれません。でも、実は最近考えがちょっと変わってきました。

自宅に帰ろうとしていたら、親子が路上販売で買い物をしていました。男の子は「これ?いや、こっちのほうがいい」とつぶやきながら品定めをしています。おっちゃんは懐中電灯で照らしてあげながら「それ人気だよ」なんてアドバイスをしています。この親子は病院の患者ではなさそうですけど、まあ、楽しそうなんです。

無理やり売りつけているわけではなく、親が子どもを喜ばせようと買ってあげて、子どもは実際喜んでいるわけです。そもそも売値だって日本円にして数百円でしょう、たかが知れています。路上販売は無許可かもしれませんがぼろ儲けできているとは到底思えませんし、おそらく儲かったって夜のおかずが少し豪華になるくらいです。

別に誰も不幸になっていないんですよね。むしろみんなハッピーになっているのに、私は何に「嫌らしい」と思っていたのでしょう。私の考えこそ「独りよがり」だったのかもしれません。ふと、自分って中国のことをまだ全然分かっていないんだなあと反省した瞬間でした。